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映画「純平、考え直せ」は奥田英朗原作の同タイトルをフィルムパートナーズが実写映画化した作品です。
監督は森岡利行、主演には野村周平と柳ゆり菜が抜擢され、ラブシーンの多さからR-15指定になりました。
第42回モントリオール世界映画祭出品作ともなった本作は任侠とSNSという異色の組み合わせです。
昔気質の舎弟チンピラの純平が鉄砲玉を目指し、奮闘する中で加奈という一人のOLと出会い恋に落ちます。
本稿ではそんな鉄砲玉・純平が最後まで逃げなかった理由をネタバレ含めて考察していきましょう。
そして加奈がSNSを通じて人々の心を動かした真意や二人のその後なども追って考えていきます。
原作小説との相違
本作を語る上で最初に奥田英朗の原作との相違について軽く触れておきましょう。
原作小説では純平一人の生き様に焦点を当て加奈は彼が関わる登場人物の一人に過ぎません。
しかし、この実写映画版では加奈がより純平と深く関わり、恋仲にまで発展する重要人物となります。
つまり映画の方がより2人のラブストーリーに焦点を当てた作りとなっているわけです。
また、野村周平と柳ゆり菜のコンビがそれをやって画になる俳優・女優だったのもあるでしょう。
こういったことが可能になったのは役者の魅力によって支えられているからです。
そしてこの相違が実は本作の加奈の行動の意味合いを違う物にしています。
純平が逃げなかった理由
純平は自身が持つ「一人前の男になる」という目標を最後まで貫き、逃げませんでした。
それがたとえどんなに破滅的で重い代償を払ったものであったとしても…。
そこまでして彼が逃げず自身の思いを最後まで貫いた理由は何だったのでしょうか?
狭く深い人間関係への固執
一番の理由は純平自身がずっと生きてきた狭く深い人間関係への固執にあります。
ずっと純平はヤクザという特殊な狭い世界での深く濃い絆による繋がりが全てでした。
悪くいえば純平は井の中の蛙大海を知らずに陥ってしまっているのです。
ましてや歌舞伎町のような明らかに危険な場所を日常としていれば感覚が麻痺して当然でしょう。
そうした純平の昔気質の舎弟ぶりが余りにも彼の全てを占めすぎていたのです。
手段と目的の一体化
そしてその狭く深い人間関係の固執の原因になっているのが「一人前の男」になるという動機です。
彼には北島という憧れの兄貴が居て、その人の為なら命を投げ出しても構わないという覚悟がありました。
そこに組長がつけ込んで敵の幹部を拳銃で抹殺してこいという非情な命令を下してしまいます。
が、純平の中では敵幹部を鉄砲玉で始末することが1人前の男の証だという図式が出来上がりました。
つまり純平の中で手段と目的が見事な一体化を果たし、何が何でも引けない戦いになったのです。
そこまで強固に骨太な芯が心の中にあればどんな人であっても彼を止めることは出来ないでしょう。
恋人よりも功績
そんな頑なな純平に影響を与えた数少ない女性の一人が何度も肉体関係を結ぶ加奈です。