かつゾンネは4人のリーダー格で指示も的確、判断力もあるとスペックも高めです。
もし犯罪行為に加担せずに普通の男女として出会っていたら恋仲になっていたかもしれません。
吊り橋効果
ヴィクトリアとゾンネを男女の関係として見れば吊り橋効果という解釈もあります。
命がけの状況で感じる恐怖の興奮と恋愛の興奮を混同してしまうという効果です。
ギャングから銀行強盗を強要され、戻ってみたら警察に捕まりそうになってしまいます。
そんな中で生死を共にすればどんな男女でも一時的な恋愛関係に陥りやすいのです。
しかも最後はホテルにまで行ってますから下手すれば性的関係も有り得たでしょう。
擬似ストックホルム症候群
そして犯罪心理として見る場合、二人の関係性として一番近いのはストックホルム症候群です。
ヴィクトリアは人質ではないので擬似ですが、ゾンネと行動を共にする内に情が移ったのでしょう。
現実でも犯人と人質が一緒に過ごしている内に妙な形で絆が芽生えることがあるといいます。
ゾンネとヴィクトリアも同様に犯罪行為に加担している内に気遣う関係性へと変化しました。
しかも、二人とも勝手に赤ん坊を連れ出した挙句道の途中で捨てるという外道行為を働いているのです。
だからこそヴィクトリアはゾンネに惹かれ、その死に涙を流したのではないでしょうか。
成長か暴走か
最初にヒューマンドラマと書きましたが、本作のこれは成長なのかそれとも暴走でしょうか?
様々な解釈がありますが、本作はどちらの要素も強く押し出されています。
まずヴィクトリアがどんどん判断力を磨いていくのはスキル面での成長です。
しかし、その成長とは犯罪行為への加担と一体化した血気を孕んだ暴走でもあります。
その両方をヴィクトリアという一人の女性に投影して本作は描いているのです。
つまり彼女のようなタイプでも追い込まれればこのような性格になり得ることを意味します。
二種の解釈が可能な物語
いかがでしたでしょうか?
本作を物語として追うと、一人の女性がどんどん犯罪行為と走ってしまう様が描かれていきます。
それ故にどうしても本作にはヴィクトリアが終盤で見せる行為に批判が集まりがちです。
しかし人間極限状態に追い込まれていけば、そのような綺麗事はいっていられなくなります。
極限状態で見せる彼女達の生き様は正しい間違いを超えた人間の凄みを教えてくれます。
また一方ではヴィクトリアがどんどん成長していき自立する物語とも解釈出来ます。
友達のいなかった彼女が初めて仲間を作り、そこで協力し成長していくのです。
そのような正と負の二種の解釈が存在する何とも不思議な作品ではないでしょうか。