さっきスマを泣かせた男と伊豆見の顔が同じということは、伊豆見もスマを泣かせるかもしれないということ。
もしかしたらすでに伊豆見のせいでスマが泣いていた可能性もあるのです。
そう思った伊豆見は、スマが悲しむ原因を消し去ろうと思ったのではないでしょうか。
自首を決めたのはスマの笑顔を守るためだったとも考えられます。
伊豆見が行き着いた先
出所後すぐに椎葉村へ向かった伊豆見はスマの家に灯りがついているのを確認します。
待ちに待った再会の時を迎えようとするシーン。誰もが感動の場面を思い浮かべたはずです。
ですがここで作品は終わりを迎えます。この余韻を残した締めくくりには何か意図があるのでしょうか。
彼が行き着いた先に見たものを考察します。
本当の自立
スマのもとへ戻った伊豆見は、これからずっと椎葉村で暮らすのでしょうか。この村には若者がほとんどいないようです。
これから家庭を持つであろう若者達が充分な給料をもらえる仕事がここにはないのかもしれません。
そんな現実が村にあるなら、伊豆見も都市へ出て行く可能性は大いにあります。彼はまた犯罪に手を染めずにいられるでしょうか。
いつまでもスマが生きていてくれるわけでもありません。彼は本当の意味での自立を迫られるのです。
美知からの拒絶
彼が椎葉村に帰ってきたのは、スマに会うためであることは間違いありません。
ですが、彼が自首した理由の一つに美知の存在がありました。きっと伊豆見はかつて自分が通り魔だった事実を美知に伝えるはずです。
それを聞いた美知はどんな反応をするでしょうか。彼を100%受け入れるとは限りません。
好きになった人が元犯罪者で、しかもトラウマを蒸し返される美知の立場だったら、彼を拒絶する可能性は高いです。
刑務所の中で罪を償った伊豆見ですが、彼の行き着いた先は現実の厳しさだったのかもしれません。
まとめ
女性や老婆を狙う犯罪者伊豆見と、何も聞かず受け入れるスマ。
スマは最初から伊豆見の正体を知っていたかどうかは、最後まで分かりません。
表面的には互いに心を癒す存在になっていきますが、実は全てスマの計画通りだったという可能性は残されています。
それでも伊豆見は人生のリセットをすることができました。人との繋がりで人は成長し、人生を大きく変える可能性があります。
そしてリセットされた人生の続きは自分次第なのだと、この作品は示しているのではないでしょうか。