出典元:https://www.amazon.co.jp/dp/B07KR3768Y/?tag=cinema-notes-22
本作は那波マオの原作漫画「3D彼女」を実写映画化した作品です。
主演は五十嵐色葉に中条あやみ、そして筒井光に佐野勇斗と原作のイメージに近いキャスティングです。
二次元の世界に生き三次元などを頑なに信じなかった彼は徐々に生の女性へと惹かれていきます。
いわゆる「電車男」などに代表されるオタク男子と美形女子とのリア充物語の系譜です。
本稿ではリアルを生きると決心した光の心情を中心にネタバレ込みで考察していきましょう。
また、色葉の記憶の蓋の鍵となったものや手術後二人が別れた真意に迫っていきます。
妄想の世界にしか生きられない男女
本作は表向き「美女と野獣」のような構造で、表面だけを見ればそれは間違いではありません。
しかし奥底まで突き詰めていくと寧ろ色葉も光も妄想の世界にしか生きられないという似た者同士です。
この内二次元にしか生きられる魔法少女ばかりを愛でる光は見た目中身共にオタクで一致しています。
問題は色葉の方で、男女がデートで行うべきことをわざわざマニュアル化しているのです。
しかも半年間限定の交際でその立ち居振る舞いも浮世離れした男性に都合の良いヒロインに見えかねません。
本作はそうした男性の都合のいい妄想の具現化をどこかパロディとして後ろからせせら笑う感覚があります。
この辺りのズレが後半~終盤の落差へと繋がっているのです。
リアルを生きる光の決心
本作のラストでは色葉を間淵に取られた光が一度落ち込むもリアルを生きる決意をします。
一度は大切なものを失ったにもかかわらず、そこまでした彼の決意は何だったのでしょうか?
彼視点でまずは考察していきましょう。
個人の世界から社会へ
まず大きな変化として、光は色葉と向き合うことで個人の世界から社会へと視野が広がります。
理解者にして親友の伊東は別としても、色葉と付き合うまでは徹底して個人の世界に生きていました。
それが彼女との付き合いによって人との繋がりが広がり、社会への関わりを持つようになったのです。
まず色葉と付き合うことで光は人間的に大きく成長していくことになります。
リスタート
光は色葉と「リスタート」することで色葉との関係性を再構築しようとしました。
これはまさに二次元に生きて、いつでもやり直しが効く世界に生きてきたからこそ出る発想です。
魔法少女えぞみちだって存在そのものは架空であり、フィギュアだって一度なくしてもまた手に入ります。
彼をずっと縛り付け、自身の人生を狭める呪縛になっていたオタク思考がここで初めて肯定されるのです。
リスタートという選択肢を取ったことで光の魂のステージが一つ上がりました。
本当に大切な人やものはまた戻ってくる
光は一度本当に大切な色葉を手放したことで何とそれ以上の幸せを掴むことが出来ました。
実はこのシーンで、人生で本当に大切な人やものは一度手放してもまた戻ってくる法則が示されています。
本当に大切な人との絆は以前と同じではなく以前よりも更に洗練された形で戻ってくるのです。
光の場合何と色葉が欠けていたはずの光との思い出を全て取り戻す最高の状態で戻ってきました。
またこの瞬間に二人の「好き」は「愛」というより深みのある気持ちへと昇華されたのです。