出典元:https://www.amazon.co.jp/dp/B01B2A1JBU/?tag=cinema-notes-22
映画「ピースオブケイク」はジョージ朝倉の原作を2014年に田口トモロヲが実写化した作品です。
キャスト陣も綾野剛に多部未華子、松坂桃李、菅田将暉、木村文乃と贅沢な面子になっています。
内容は彼氏持ちの志乃と彼女持ちの店長京志郎がバイト先で出会い恋に落ちるというシンプルな内容。
しかし、そのシンプルさの中に現代女性の職場恋愛や仕事の感覚というリアルも盛り込まれています。
そうした演技のリアルさが評価され、以下の賞を受賞しています。
第7回TAMA映画賞 最優秀男優賞
第25回日本映画プロフェッショナル大賞主演女優賞
第25回日本映画批評家大賞主演女優賞引用:https://ja.wikipedia.org/wiki/ピース_オブ_ケイク
今回はラストに志乃がキスした意味を中心に気持ちの揺れ動きを考察していきましょう。
また、偶然会った京志郎から逃げた理由やあかりの正体なども併せて掘り下げていきます。
泥沼なのに軽やか
本作の面白い所は内容自体は非常に面倒くさいのに何故か軽やかであるということです。
正樹と別れて慎重な志乃と京志郎は双方面倒くさい人に違いありません。
その割にいわゆる昼ドラのような後味の悪さのような嫌な印象は意外に受けないのです。
それは変にドラマっぽくせず等身大の恋愛として演出しているからではないでしょうか。
下手すれば三角関係の縺れから刃傷沙汰に発展してもおかしくありません。
余り尾を引かないサッパリした関係が本作の軽やかさに繋がっているのでしょう。
志乃がキスした意味
本作で一番注目の的になっているのがラストで志乃が京志郎にキスした意味です。
彼女は劇中何度も京志郎の無自覚な身勝手さに振り回されやきもきしています。
そんな彼女がキスしたことには何の意味があったのでしょうか?
ダメ男を放っておけない
一番の理由はやはりそもそも多部未華子演じる志乃がダメ男を引き寄せてしまうからでしょう。
典型的なダメンズウォーカーで、流れに身を任せるような恋愛しかしていないからです。
ここが本作のリアルな所で、志乃は仕事のスキルこそ成長しましたが恋愛スキルは成長していません。
正樹に続き京志郎もダメ男だと散々思い知った筈なのに、はねのけて損切りする勇気はないのです。
だからまた京志郎と会って深くまでのめり込んでしまうと途端に放っておけなくなります。
将来設計がない
これは京志郎と志乃の双方にいえることですが、彼らには明確な将来設計がありません。
京志郎も彼女のあかりと付き合っているものの結婚に踏み切る勇気はないヘタレです。
一方の志乃も恋のアバンチュールを楽しみたいだけでじっくり愛を育てる気がありません。
結局二人とも見た目の大人っぷりに反して中身はお子様の領域を抜けていないのです。
でなければ一度気まずくなって別れた人とキスしようなどと思わないでしょう。
ダメだった頃に逆戻り
つまり二人は元のダメ男とダメ女に戻ってしまったということではないでしょうか。
表向きハッピーエンドのようでいて、実は決して二人の復縁を肯定していません。