しかし、その母とは上手く行かず親離れで上京したことから毒親育ちの可能性が濃厚です。
あかりが京志郎に気を許したのも毒母に育てられたせいでダメ男を捕まえやすいからではないでしょうか。
かつその母の訃報で一度帰郷しますから、母のことが尾を引いていたのは間違いないでしょう。
だからこそ寂しがる女性を受け入れてくれるダメ男の京志郎に引っかかったのです。
作家志望
終盤では彼女が作家として自分と京志郎の別れを本にして出版したことが判明します。
ここから察するに実は京志郎との関係性をそこまで重く考えていたわけではないでしょう。
寂しかったのは事実でしょうが、だからといって志乃程男に深く依存はしていません。
そうでなければ元彼との別れを本にして出版など恥ずかしくて出来ない筈です。
あかりはその意味で一番人付き合いに関してはクールといえるのではないでしょうか。
原作との相違
あかりに関しては原作漫画だともう少しキャラ設定が追加されています。
実はあかりという名前自体も偽名で、しかも在宅で出会い系のサクラをやっていたのです。
だから原作の彼女は違法寸前の裏をかいくぐった人間ということになります。
京志郎以外の人間と関わりを持たなかったのはそうした理由によるものです。
あかりのキャラがややおとなしめになったのは木村文乃さんの人柄も影響しているでしょう。
職場の変な人達
こうした本作独自の作風を彩ってくれたのは何よりも志乃と京志郎を取り巻く人々です。
特に松坂桃李演じるオカマの天ちゃんや親友のナナコ、天ちゃんが好きな川谷などは欠かせません。
ナナコはまだ割とまともですが、オカマの天ちゃんはいわゆるLGBTに該当する少数派です。
そしてその天ちゃんが好きな川谷は志乃に職場で付きまとうストーカーとなっています。
こうした志乃を取り巻く人達もやはりどこかしら根本がズレている人達が多いのです。
そうした環境に置かれれば、誰だって志乃や京志郎のようになるのではないでしょうか。
人間環境には勝てない生き物なので、志乃と京志郎はこうなる運命だったのかも知れないですね。
簡単だけども面倒くさい、それが恋愛
本作のタイトルは「ピースオブケイク」、日本語で「朝飯前」ですがその意味は何でしょうか?
確かに人を好きになったり、肉体関係を持ったりすること自体は意外に簡単なことです。
しかし、そこから先の本音のぶつかり合いといった対人関係はとても面倒くさくなります。
本作のタイトルはそうした「簡単だけど面倒くさい」恋愛の本質を皮肉っているのでしょう。
恋愛といっても基本は人と人の信頼・信用の上に全てが成り立っているのです。
ただ、若いときはそうした人間関係のイロハなどが見えにくいのではないしょうか。