息子に同じ思いはさせないと誓っていたにもかかわらず、これはクリスにとってあまりに辛い経験です。

涙の理由は、自身のふがいなさへの強い怒りといえるでしょう。

全てを失ったことで、彼は自分の本心に立ち戻ることになったのです。

絶望からの再起

しかし、その経験は逆にクリスにエネルギーを沸かせることになります。

早めの出社や、寝る間を惜しんでの勉強はもちろん、寝床を確保するためになりふり構わず、他者を押しのけるシーンまで。

本当に大切なもののために、優先順位をより明確にするに至ったことがわかります。

それもすべて、息子の幸せのため。目指す目標に向けて、彼が持っていた貪欲さが更に強く発揮されることになります。

住むところまで失った経験は、クリスが本当に必要なものにフォーカスする視野を与えたのです。

息子が与えてくれたもの


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そしてまた、そんな境遇でもクリストファーは父親への愛を疑いません。

いいパパだ

引用:幸せのちから/配給会社:コロンビア映画

クリスには、自身の父親不在による反発心がありました。そのため態度も頑なで、妻や隣人へ強く当たっていたのです。

それが、他の全てをなくしても、唯一失われなかった息子からの愛によって転換に至ります

宿泊する場所を探して人を頼り、ミサを聞いて息子を抱きしめるクリス。大切な存在があることに心から感謝している様子が窺えました。

愛するものから癒しを得て、生きための強い力をもらえるということもこの映画のテーマなのです。

幸福の追求と愛するちから

最後に、この映画で語られている二つのメッセージについて考察します。

誰もが幸せになっていい “彼”が送るメッセージ

映画の最後に、ウィル・スミス親子とすれ違う黒人男性はクリス・ガードナー本人。彼の登場で作品締められることは象徴的です。

「誰もが幸せになっていい」というのは、作中でも引用されているアメリカ独立宣言の「幸福の追求」によるもの。

「苦しい状況から幸せになるには非常に困難なもの。それでも夢を見失うな」。

物語を追うことで、そんなメッセージをガードナー本人がそう語ってくれているようにも思えます。

愛する“ちから”がもたらすもの

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努力が実り、仕事を手にすることができたクリス。人ごみの中で涙をこらえ、走る先はやはりクリストファーの元。

彼が力を発揮する理由には、常に息子の存在がありました。

息子を愛することによって生まれるちからと、息子から与えられた生きるためのちから。

「幸せのちから」とは、この双方を指しているのではないでしょうか。

愛が与えてくれる力によって人は強くなることができる。この作品はそう教えてくれてもいるのです。