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映画「スペシャルアクターズ」は2019年公開の松竹ブロードキャスティング製作作品です。
「カメラを止めるな!」で有名な上田慎一郎監督の下、大根役者・大野和人の成長物語として描かれます。
大澤数人のプレッシャーを常に感じるあがり症の性格なども主人公像として非常にユニークです。
脚本も非常にしっかり練られていて、ラストへ向かってのどんでん返しも有効に機能しています。
本稿ではそんな和人が気絶体質を克服できた理由をネタバレありで考察していきましょう。
そしてまたなぜ彼がカルト集団を倒せたのか、そして事務所に誘った宏樹の目的も見ていきます。
俳優事務所と何でも屋
本作全体を特徴付けるものとして有効に機能しているのがスペシャルアクターズの設定です。
彼らは俳優事務所でありながら、同時に世の中のあらゆる問題を「演技」で解決してしまいます。
この設定は二重の意味で面白く、まず一つが芸能界と世間一般を繋げていることです。
芸能界は特殊な世界故に非常に狭く限られており、浮世離れした存在でもあります。
それが演技を通して何でも屋として外との繋がりを持つことで世間一般への貢献に繋がるのです。
そしてもう一つが芸能活動自体を一つの“ごっこ遊び”としてメタ化させています。
演技・芝居とは元々子供の頃にやっていた「なりきりごっこ」が伝統芸能へ形を変えたものです。
その構造をかなり意図的に遊びとして描いていることが本作独自の作風を構築しています。
この設定がしっかり根っこにあるからこそ破天荒な展開に筋が通っているのです。
気絶体質を克服できた理由
本作の主人公・和人は中々俳優として芽が出ずに苦労している大根役者でした。
そんな彼が何故終盤で自らの弱点である気絶体質を克服するに至ったのでしょうか?
あらすじなどを追いながら考察していきましょう。
なりきりと予祝
一番大きなヒントは和人にはレスキューマンという憧れのヒーローが居たことです。
彼はレスキューマンとなっている自分をありありと想像しながら、そのイメージを膨らませました。
そしてそのイメージを現実の行動としてアウトプットする、正に「予祝」の力が働いているのです。
よくトップアスリートは勝負に出るとき、具体的に勝っている自分の姿をありありと想像すると聞きます。
例えばスケートの羽生結弦選手も飛行機の中で勝ってる姿を想像しながら優勝時よりも大泣きしたそうです。
そうしたヒーローへのなりきりを前向きに予祝の力へと変換したことが非常に大きな要因でしょう。
弟達の助力
そんな和人のなりきりによる予祝を大きく成功させた最大の鍵はスペシャルアクターズの仲間達でした。
仲間達の支えによって成長するのはありきたりですが、本作の場合それが「環境」の力にもなるのです。
人間どんなに強い力を持っていたとしても個人でやれることには限界があり、環境には勝てません。
思えばスペシャルアクターズに来るまではオーディションで監督に怒鳴られ萎縮していました。
和人は小さい頃から何かをする度に怒られ押さえつけられる環境で生きてきたのではないでしょうか。
それが永きにわたって続いてきたから問題が複雑化しここまで大きく拗れてしまったのです。
だからスペシャルアクターズはそんな和人を否定せず受け入れてくれる最善の環境だったと推測できます。
カルト集団「ムスビル」の存在
そして何より気絶体質を克服するのに一番貢献したのはカルト集団「ムスビル」の存在ではないでしょうか。