やたらと耳の大きな外務大臣は薄い存在感でしたが、実はかなり重要な役割を果たしています。
ちなみにあまりにも影が薄いので三谷監督が依頼して特殊メークで大きな耳を作ったそうです。
アメリカ大統領が日系三世という布石をきれいに回収する役割も担っています。
ずんの飯尾が演じた外務大臣の存在は黒田にどんな影響を与えたのでしょうか。
接待ゴルフでの出来事
官房長官の言いなりになっている外務大臣はゴルフがとても下手でした。
立場上黒田の秘書官はメインパーティには同行せず、外務大臣のパーティに組み込まれます。
もし井坂秘書官がメインパーティに同行していたら、官房長官の外交上の忖度に乗らない黒田を嗜めたことでしょう。
しかし外務大臣が下手過ぎてどんどん離れてしまいます。
政治的な忖度ゴルフに嫌気がさしていた大統領でしたが、それを態度には出しません。
井坂がいなかったことで黒田の誠実さが際立ったのです。
外務大臣のナイスプレーというところでしょうか。
それにしても佐藤浩市の真っ赤な口紅とかつての黒田が大統領の通訳官に手を出していたのには驚きますね。
ホームパーティでの出来事
料理人寿賀さんが作った『黒田が得意な鴨のパイ包み焼き』は大統領のお土産だったアメリカンチェリーがソースとして使われています。
大統領はアメリカンチェリーの輸出拡大を目論んでおり、そのことは概ね日本政府了承の事項だったのです。
しかし、ここでも黒田はバカ正直に断りました。
そしてサクランボ生産者の陳情シーンを見事に拾い上げた設定です。
その時の外務大臣の発言も黒田に有利に働きました。
外務大臣の口から出た『官房長官のご意向』という単語に大統領は反応します。
ゴルフの時のOKジャッジの不快さを思い出したのでしょう。
この時点で鶴丸官房長官は信用に値しないと断定したのです。
おかげで黒田の株も急上昇しました。
外務大臣、本日2回目のナイスプレーですね。
豪華なキャスト
三谷作品の常として日本を代表する俳優陣が出演します。
ほぼ常連の俳優たちは『三谷組』と呼ばれ『この人がこんなことするの!』という設定で毎回楽しませてくれるのです。
官房長官役の草刈正雄のアロハ姿や女装した佐藤浩市など主役級の小ネタには笑いを超えて驚いてしまいます。
天海祐希がテレビ画面に映りこむ程度の端役で出演していますし、秘書官ディーン・フジオカのクールな演技も素敵でした。
やたらと黒田を批判する妙に色っぽいキャスター役の有働由美子の演技もなかなか見ごたえがありました。
黒田の妻役の石田ゆり子の吹っ切ったような絶叫や妖艶な姿を披露した吉田羊。
出演者全員が従来のイメージを捨て去り映画作りを楽しんでいるように見えます。
これだけのキャストにこれだけのことを要求し、かつ高いクオリティの作品に纏める三谷幸喜監督は『只者』ではありません。