多重構造で描かれた秀逸なシナリオはもちろん、前章で語ったように、主役か分からなくなるほどそれぞれが魅力を放つ登場人物たちの存在が。

それが観客の笑いや感動を誘い、映画に引き付けられる要因となりました。

また、このキャラクターたちは監督が当て書きをしているので、見た目との相性の良さが際立っています。

役名にも実際に演じる俳優の名前の一部が組み込まれており、当て書きと分かるような仕掛けも魅力です。

クセのある憎めない登場人物たち

全ての登場人物に共通するのは「ツッコミどころ」があることです

本作を手掛けた上田慎一郎監督は、総勢15~16名のキャストそれぞれに見せ場を作ることが脚本を書く上で最も難しかったと語っています。

観客が登場人物に自らを投影する

映画中に登場する癖の強いキャラクターや、突然襲いかかるハプニングは本作の注目ポイントです。

しかし一歩引いて、普段私たちが所属するコミュニティ、たとえば会社や学校やサークル、または家族・友人関係と比較してみてください。

すると、癖のある人物の存在や、予想外のハプニングが起こる状況というものは、実生活にも起こりうることだと気づきます。

映画中でたびたび起こるハプニングを必死で対処しようとするキャラクターの姿に、観客は自分自身を投影します。

そして、「ああいう無茶ぶりあるよね」「ああいう自己中な後輩いるよな」と、共感ポイントを見つけていくのです。

思わぬトラブルを切り抜けようと奮闘するキャラクターたちに鼓舞され、実生活を強く生きる活力をもらえる点は、間違いなく観客を引き付けた要因の一つだといえるでしょう

ものづくりにおける”影”の大切さ

カメラを止めるな! ウィンドブレーカー 【F(L)】

映像をイチから作る現場に出くわす機会は、普段生活する中でそれほどありません。

カメラマンや現場スタッフら「黒子の役割を担う人々」の存在がものづくりにおいて如何に重要か、本作を観てあらためて気づいた方もいらっしゃいますよね?

時には走り回って、時には地べたに寝転んで、ベストショットを撮ろうとする彼らの努力に感銘を受けた方も多いはずです

エンドロールに至るまで見える制作側のこだわり

キャストや監督、カメラマンや現場スタッフなど、作品の作り手にスポットを当てた【カメラを止めるな!】ですが、当然ながらこれらは全て「つくりもの」、いわばフィクションです。

つまり、現場には実際に【カメラを止めるな!】の映像を作るカメラマンやスタッフの存在があったということです。

実はエンドロールで、本物の製作陣が映像を作っている様子を観ることが出来ます。最後の最後でこれがグッとくるのです

たとえインディーズ映画であっても、必死におもしろいものを作ろうと情熱を燃やすスタッフ陣の姿に「自分は普段彼らほどの情熱を持てているだろうか」と自身に問う観客も多かったのではないでしょうか

映画の成功は彼らの存在を抜きにしてあり得なかったと断言できるでしょう。

まとめ

【映画パンフレット】カメラを止めるな! ONE CUT OF THE DEAD

【カメラを止めるな!】の成功の裏には、多重に作りこまれた観客を引き付ける巧みな構造と、登場人物の個性抜群なキャラクターに加え、全身全霊でものづくりに臨む姿勢が隠されていると分かりました。

彼らの情熱が、観客ひとりひとりにダイレクトに”感染”し、この先何年経っても、何度見ても、そのたびに引き付けられてしまう傑作として後世に残ることは間違いありません。

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