そして彼の考えの逆を行くのぞみは、計画の障害となる存在だったように見えます。
反逆者のぞみ
桜庭が考えているAIと浩介のAIのぞみは正反対の存在です。そのため桜庭はのぞみを反逆者として捉えていたのではないでしょうか。
のぞみは弱者を助ける役目を担いますが、桜庭にとってのぞみの行動は邪魔なだけです。
ですが今はのぞみが世の中で感謝されている存在ですから、真正面からのぞみを否定することは桜庭にとって不利な状況を作ります。
この状況を逆転させるためには、のぞみを悪者にし、桜庭が正義の如く叩き潰すのが一番効果的だと考えたはずです。
だからこそのぞみを暴走させて自滅の道へ追いやったのだと推測できます。
「豊かな日本」の定義
桜庭は日本経済を立て直して、豊かな日本を目指していました。ですが生産性の高くなった日本は本当に豊かになるのでしょうか。
豊かさの基準
例えば桜庭が考えた通りに病人や老人を切り捨てたとします。物質的に豊かになった日本は果たして本当に豊かな国といえるでしょうか。
毎日生産性に追われて、ちょっと休憩したくらいで怒られるような社会を私達は「豊かな国」と称賛するはずがありません。
お金だけがこの世に価値を与えるわけではないはずです。
誰のための生産性か
もし介護関係の会社が高い生産性を誇っていたら、桜庭はここを暴走のターゲットにしないでしょう。
しかし老人を排除してしまったら、この介護関係の会社は収入がなくなります。
社会は持ちつ持たれつで成り立っている部分があるのです。
誰もが日本経済に欠かせない存在であることを理解せずに、豊かな日本を目指すのは無謀だと言わざるを得ません。
桜庭の個人的欲求
桜庭は人間の選別のために暴走させたと語っていましたが、それだけが理由ではなさそうです。
彼がのぞみを暴走させた個人的な狙いも考察したいと思います。
トップに立ちたい桜庭
もしのぞみが暴走し、多くの犠牲者が出れば、のぞみに対する批判とともに浩介への批判は免れません。
浩介の地位は落ち、犯罪者となるのです。そうなれば彼がまたAIの世界で活躍できる見込みはほぼゼロ。
同じ科学者として桜庭が台頭しやすい環境が準備できると考えられます。
ライバルを潰す意味でも桜庭がのぞみを暴走させたといえるでしょう。
百目を試すチャンス
桜庭が作り出したAI百目は天才科学者の浩介を追い詰めました。
のぞみも素晴らしいAIですが、百目もかなりの実力を持ったAIだと判断できます。
天才科学者浩介を相手に、百目がどれだけの力を発揮できるか実験できる機会だと桜庭が受け止めてもおかしくありません。
日本経済の大義を掲げる一方で、科学者として腕試しする場として、のぞみ暴走を企てたのではないでしょうか。
のぞみが暴走した真意
ライフラインとして既に機能しているのぞみが暴走したら、多くの命が奪われることは簡単に想像できます。