達夫にとっては精神的に厳しい判断ですが、拓児と一緒に現場に入ることで、拓児の生き方も千夏の輝きも取り戻せるのです。
達夫に迷いはなかったと思われます。
ようやく、素直に自分の気持ちを表現することができた達夫に、3人で新しい家族を作るという新しい目標ができました。
千夏にも暗い底辺の生活から、わずかな光を達夫と共有できる希望が湧いてきます。
いまわしい事件が起こったのは、3人が新しい未来に希望を持った直後でした。
ラストに二人が見た眩しい光の意味とは
ラストシーンで、夕陽に照らされた2人の姿は印象的でした。
希望の光が2人を包み込んでいるようです。
千夏に希望を与えた達夫のやさしさ
拓児が中島を刺して自首したことで、千夏の心が崩壊してしまい父親を殺害しようとします。
拓児がいることで千夏の心のバランスは保たれていたのです。原因が自分にあることの葛藤があったのかもしれません。
危ういところで、達夫に制止され目が覚めた千夏。千夏の涙は後悔と安堵(あんど)が入り交じった複雑な心情のあらわれです。
生きていくことのつらさは、今までいやというほど味わっています。
達夫が一緒にいてくれたら今までとは違う希望が見える。海岸に走り出す千夏に夕陽はやさしく光をそそいでいました。
2人は降りそそぐ夕陽の光に生きているよろこびを感じた
何も言わずに、千夏との距離を縮める達夫のさりげない優しさ。達夫ごしに見えた夕陽は眩しい希望の光でした。
夕陽に照らされた千夏を見る達夫にとっては、千夏が眩しくも愛おしく思えたのです。
ラストの眩しい光は、千夏の希望と生きているよろこびをあらわしています。
今までの生活は暗い場所でした。暗いところから見る光は、それがわずかな明るさでも眩しく希望の持てる未来なのです。
これからの2人
生きていく希望を見いだした千夏と達夫は、今までとは正反対の明るい人生を送っていくでしょう。
達夫には千夏との家庭を築くことが生きていくための目的となりました。
拓児の罪は、中島が生きていることで傷害にとどまると思われます。
そう遠くない未来に、また屈託のない笑顔を見せて帰ってくるでしょう。
これからの生活は、金銭的には決して楽ができるとは思えません。
ただ、達夫が鉱山で働き始めることで少ないまでも収入が安定します。
拓児も帰って生きて一緒に働くようになるでしょう。大城家にも潤いがもどると思われます。
まとめ そこのみにて光り輝く
タイトルの「そこ」は家族の底辺にあるものという意味だと思われます。
もろく崩れやすい場所にあるからこそ、わずかな光も輝かしく尊いものに思えるのでしょう。
傷つきながらも家庭のぬくもりを欲した達夫にとって、千夏の放つ光は眩しく希望にあふれた未来を照らしていたのです。