中島が彼女に向けて作った歌が大ヒットしたのはこの成功法則を踏んでいたからです。
心から望む音楽
このラブソングに向けて中島が込めた願いは決して応援してくれる彼女の為だけではありません。
その先に実現したいと願っていたボブ・ディランのようなロック魂溢れる音楽を作りたいからです。
彼が心底から望む音楽のモデルはボブ・ディランの「ライク・ア・ローリング・ストーン」にありました。
中島達がそこに辿り着く為に、誰よりも中島自身が自分の音楽の芯を作らないといけません。
その為の最初のステップ・試練が彼女に向けた「アイデン&ティティ」なのです。
幻が曲を聞いた姿を消した理由
苦悩する中島の傍にいつしかボブ・ディラン似の幻が姿を現すようになりました。
しかし、その幻は何故か最後の方で曲を聞いた瞬間に消えてしまったのです。
ここではその理由をあらすじも含めて見ていきましょう。
ロックの本質に辿り着いたから
結論からいうと、中島が「ネオバンド天国」というテレビ番組でロックの本質に辿り着いたからです。
ロックの本質とは「若者による従来の音楽への反抗」であり、中島は正にあの番組でそれを見せました。
彼のロック魂の正体、それは「売れる曲」や視聴率といった数字ばかりを求める汚い大人への反抗です。
勿論仕事としてやる以上数字を稼いでナンボなので、大人達は必ずしも間違いではありません。
しかし、それが常態化していくと結局ロック魂という音楽の本質からはどんどん遠のくことになります。
当初からずっと抱えていた業界への不満がロック魂へと見事に昇華されていったのです。
歌謡曲とロックの相性の悪さ
中島は日本という国で本格的なロックをやるのは無理があるという相性の悪さを口にしていました。
日本の音楽はどこまで行こうと歌謡曲、もっと突き詰めると5・7・5・7・7の短歌が始まりです。
だからどれだけロックテイストを入れようとこの原則から逃れることは出来ません。
やはり音楽も所詮は国の歴史が生み出す文化であり、日本には日本独自の音楽というものがあります。
そうした音楽の壁と民族の壁という大きなハードルがあったことが幻を生み出していた大きな原因です。
中島≒和製ディラン
壁を乗り越えぶち破った時に初めて幻が消えたということは中島が和製ディランになった証ではないでしょうか。
勿論ここでいう和製ディランとは姿形が似てるとか売れているとかそういう表面的なことではありません。
もっと奥深くにある魂の部分でディランとの一体化を果たしその神話を日本で体現したことでしょう。
それは売れる売れないとか誰のために歌うとか、そうした次元の葛藤をとうに乗り越えた先に来るものです。
つまり中島の魂がここで本物のロックとなったからこそディランの幻が姿を消しました。
中島の衝突
こうして中島が本物のバンドマンになる為には、いくつもの衝突がありました。
「アイデン&ティティ」とラストの幻が消えるまでに彼が経験したことは細々あります。
ここではその葛藤の元になっていた他の要素から重要な衝突を切り抜いてみましょう。
仲間との衝突
まず一番身近だったのはメンバーとの衝突によって生じた葛藤ではないでしょうか。