そうなればロンが提唱した治療法は今でも日の目を見ずにいたかもしれません。
それどころかむしろエイズ治療に悪影響及ぼすとされ、禁止されていた可能性も考えられます。
ロンが裁判で声を上げたこと自体が感謝されるべきことなのです。
社会に与えた影響
ロンはエイズ患者のために活動してきましたが、影響はもっと広い範囲にまで及んでいました。
彼が社会に与えた影響とは具体的にどのようなものだったのでしょうか。
他人事から自分事へ
ゲイがかかる病気だと思われていたエイズが、性に関わらず誰の身にも起こり得る病気だという事実を広めた功績は大きいと思われます。
このことによりゲイの人への偏見が緩和されたのはもちろんです。しかしその他にも社会に与えた影響があります。
それは他人事のように見ていたゲイ以外の人にも、エイズを自分事として捉えさせた点です。
最初のうちはロンもそうでしたが、自分に関係ないことはまるで別世界の出来事のように解釈します。
他人事の無自覚エイズ患者は、遠慮なくエイズを拡大させていくでしょう。
逆に自分事と捉えたエイズ患者は何かしらの予防策をとるはずです。
どちらもエイズ患者なのですが、彼らのとる行動は明らかに変わると考えられます。つまり意識の差がエイズ感染者数に関係するのです。
だからこそエイズをゲイ以外の人間に意識させたロンは、エイズ拡大を食い止める働きをしたといえるでしょう。
正しい医療
効果のある治療・薬が用いられていないかもしれない。そんな疑惑の目を医療に向ける人はそういません。
医療へ厳しい視線を送る人が増えれば、エイズに限らず他の病気に対しても正しい医療を求められます。
そうなれば医療の質が上がり、もっと安くもっと多くの命を救えるようになるでしょう。
このことからもロンが社会に与えた影響の大きさが窺えます。
まとめ
死にたくない一心で薬を探し求めたロンは、いつしか他人のために薬を配るようになりました。
国・製薬会社への怒りと、人から感謝される喜びがロンの原動力になったのは間違いありません。
もし彼が「自分さえ良ければ」と考えていたら、今でも医療に疑問を持つこととは無縁だったかもしれないのです。
ロンは金儲けに走ったままで生涯を終えることも可能だったでしょう。
しかし人の役に立つことの方が、お金よりも価値があると彼は気づいたのだと思われます。
自分がロンの立場になっていたら、彼と同じ行動をとれるでしょうか。