そしてその言葉はなおみの心にも響くのです。
それはカウントダウンパーティーで『オヤジ』と一緒にいたなおみの表情でわかります。
ハナと武藤田
憲二の歌で自殺を思いとどまった武藤田はまだ『カッコよさ』に拘っています。
それに気づいていたのはハナだけでした。
ハナはこの期に及んでもそれに拘る武藤田にイラついて感情をぶつけます。
その言葉は武藤田に対する自分の中での決別でした。
武藤田に投げた言葉は自分に対しての言葉だったのです。
過去を隠さず自分に正直に生きていくというハナの強い意志に武藤田は影響を受けてしまいます。
彼はハナの言葉を自分に置き換え『ハナの助言』として受け取りました。
そして政治家として泥臭く生きていく決心をします。
ハナとしては助言をしたつもりは無いのです。
憲二の歌といいハナの言葉といい、武藤田は影響されやすい人物なのでしょう。
正直に生きるをテーマにした理由
本作は1930年代に公開された二つの映画をオマージュしています。
三谷幸喜監督の古い映画に対する思い入れは有名ですが、この作品に関してはテーマも設定も参考にしています。
テーマは『正直に生きる』
根幹に流れるテーマである『正直に生きる』は1936年公開の『有頂天時代』へのオマージュです。
そしてオールスターという設定は1932年公開の『グランド・ホテル』をイメージしています。
どちらも戦前に公開された古い映画ですが、改めて観ると本作のテーマをより深く感じることができるかもしれません。
監督のこだわり
『三谷組』と呼ばれる俳優たちが、作品ごとにキャラクターを変えて登場するのが三谷監督作品の特徴です。
役所広司はもちろん、唐沢寿明やYOUや角野卓造、篠原涼子や伊東四朗そして西田敏行など枚挙に暇がありません。
さまざまなキャストが作品を彩っていますが、中でも客室係として出演した堀内敬子は素晴らしい歌声を披露しました。
それは『大晦日に想う』という楽曲ですが作中では歌詞は出てきません。
オリジナルサウンドトラックにだけ歌詞付きの楽曲として収録されました。
ここにも本作に対する監督の強いこだわりを感じます。
それぞれの今後
新堂の「お帰りなさいませ」というセリフは印象に残ります。
観終わった後、大晦日最後の2時間で起こった様々な奇跡に影響された人々の今後を考えずにはいられません。
新堂と矢部はどうなっていくのでしょう。丹下と睦子の結婚は長続きするのでしょうか。
夢を追いかける決意をした憲二、もう逃げないと決めたハナ、そしてなおみやヨーコやチェリーたち。
登場人物全員の今後の幸せを祈ってしまうという余韻も楽しめる素敵な映画です。