ラーメンとの関連性にも通じますが、誠一はこうした人と人の思いを繋げたいのではないしょうか。
花屋という仕事、そして花束というものはそれ自体深い意味はなく伝える相手がいて成立するものです。
人の想いを知り、それに応じた花束を用意して渡すことで人と人との想いを繋げ広げたいのでしょう。
本作ではそれを”好き”という言葉で置き換えていますが、花を通して人の気持ちが繋がるのが好きなのです。
その証拠に誠一に片思いしている宏美と陽子、そして後輩・佐藤も誠一の花屋を通して繋がったのですから。
本作はその意味で花を通して「個」を「多」へと広げていく物語ともいえます。
ラーメンとの花の関連性
さて、本作の花屋と対比するようにして描かれていたのが木帆が跡継ぎとなったラーメン屋です。
まるで花とラーメンという要素には繋がりがないようですが、一体どこに関連性があるのでしょうか?
あらすじなどを丁寧に踏まえながら読み解いていきましょう。
過去と現在
まず隠喩として見ると、誠一の花は「現在」、そして木帆の継いだラーメンは「過去」ではないでしょうか。
誠一は花を通じて多くの人々の想いを具現化させ繋げているのに対して木帆のラーメンで人の想いは繋がりません。
そしてまた木帆自身ただ親が遺したものをなし崩しに継いでおり、過去の想いに囚われているのです。
寂れたラーメン屋と今現在輝いている花屋、まずはこの二つに時代の変化の象徴が盛り込まれています。
自分の為と他者の為
そこから見えてくるもう一つの関連性はラーメンが「自分の為」で花は「他者の為」ではないでしょうか。
どちらもお客様に直接触れ合う仕事ですが、閉店間際に食べに来るのは自分の為だと木帆は述べます。
それに対して誠一は急になくなったら悲しむ人がいるだろうと他者を思いやっているのです。
ここからラーメンと花が木帆と誠一の性格や仕事に対する想い・スタンスの違いが見えてきます。
つまり木帆の方がやや男性的で我が強く、誠一がやや女性的で優しさと愛に溢れているという違いです。
赤い薔薇に添えられた気持ち
その対比が明瞭となるのが最後の日、木帆が誠一に頼んだ100本の薔薇の花を1本ずつプレゼントするシーンです。
すると不思議なことに赤い薔薇という強い情熱の籠もった花がラーメンとお客様を繋ぐ役割を果たしました。
そこにあるのは最後まで食べてくれたことへの感謝であり、木帆もまた花を通じて人に想いを伝えたのです。
そのことによって僅かながら木帆の中にあったわだかまりもなくなったのではないでしょうか。
そしてそれがラストシーンの誠一と木帆の関係にも繋がっていくのです。
誠一と木帆の関係
誠一と木帆はお互いにラーメン屋と花屋での交流を経て、最後は手紙で気持ちを知りました。
そして彼は白い花束を用意して木帆に渡そうとしますが、場面はここで終わりを迎えます。
果たして花束を通じた誠一と木帆の関係性はどのような感じなのでしょうか?
白い花束の意味
白い花束とは場面によって色々な意味を持ちますが、ここでは恐らく「リセット」です。
というのも木帆はお店を閉めた後、将来の為に海外留学への決意を固めていました。