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映画【江ノ島プリズム】はタイムトラベルというSFのスパイスが効いた青春映画です。
修太の決断の是非については様々な考え方があるのではないでしょうか。
彼は自分自身の判断をどのように考えているのか探ってみましょう。
自らをタイムプリズナーと称する今日子の運命もまた切なさを誘います。
プリズムとプリズナーの韻合わせもうまい設定です。
「もしも」があれば人の運命は変えられるのでしょうか。
それは未来にどのような影響を与えるのかについても思いを巡らせたくなる作品です。
二つの笑み
修太は二回朔とミチルを見送ります。どちらの場合にも修太はかすかな笑みを浮かべるのです。
二つの笑みはその意味が全く異なります。修太はどのような思いで笑みを浮かべたのか、それぞれの場合を考えてみましょう。
江ノ電に乗る二人を見送った笑み
このとき朔とミチルは既に修太のことを忘れています。一方で修太の方はまだ記憶が消えていません。
彼の笑みには朔を救えたという満足感があったはずです。
何度もタイムトラベルし、やっとの思いで過去を変えることができたのですから。
本来であれば修太はミチルと恋仲になれたはずでした。修太はその運命を朔の命と引き換えにしたのです。
修太は一瞬自分自身がバカで哀れなピエロに思えたかも知れません。
もらした笑みはそのような自分に対する自嘲的な意味合いもあったのでしょうか。
江ノ電を見送った修太が号泣したのは、それまでの緊張の糸がほどけて感情があふれ出したからにほかなりません。
二人に自分は忘れ去られ、これから自分自身も二人を忘れてしまうのですから。修太の思いを考えれば涙を誘います。
浜辺の二人を見送った笑み
江ノ島の浜で三人は偶然再会します。このときは修太の方も既に朔とミチルを忘れてしまっています。
赤の他人同士が会ったのです。修太がミチルに渡したのはプリズムではなく単なるガラス細工でした。
プリズムの光のような魔法は解けていました。修太が見せた笑みは何の含みもない会釈代わりの笑みだったのです。
ミチルが少し振り返って修太を見たのは、記憶こそないものの何か感じるものがあったのでしょうか。
本棚のタイムトラベラー
この物語の切っ掛けになったのは朔の部屋の本棚にあったタイムトラベラーという子供だましのおまけグッズつきの本でした。
いかにも小学生の子供が持っていそうな代物です。