原因は長年の不況だったのですが、祖父は祖父で老人介護の手伝いではなく戦う仕事に就けといいます。
その祖父の老人ホームに対する思い入れに恩義を感じて彼らは引き受ける格好となりました。
こう書くといい話のようですが、客観的に見れば血の気の多い元軍人と無職揃いという危ない家系です。
ましてや社会状況などから見るに投資などによる不労所得など他の選択肢もなかったのでしょう。
それで銀行強盗に走るというのは極端にも程がある選択なのですが…。
仲間がとんでもない人達だった
二つ目にそのような無職の兄弟が集めてきた人達もまた武器マニアに鍵師に盗みの達人ばかりでした。
この兄弟にしてこの仲間ありといった感じですが、いずれもが労働者の鏡から逸脱した人達です。
だからこそ自分達が行う銀行強盗という選択肢に対して一切の疑問を挟みません。
というか、これ位狂っている人達でなければ銀行強盗などやろうとはしないのでしょう。
英雄と犯罪者は紙一重
しかしこのような犯罪行為をやっていた人達が所変わって後半ではゾンビの危機から町を救う英雄になります。
何とも不思議なものですが、しかし英雄と犯罪者とは案外紙一重であることを示しているのではないしょうか。
やってることは犯罪でもこの兄弟は本気になれば車や武器、仲間を揃えてサクッと実行してしまえるのです。
そしてその常識外れな行動力と決断力があるからこそゾンビを前にしても怯えず冷静に対処出来たのでしょう。
兄弟にしろレイおじいちゃんだって元軍人ということは英雄でもあり戦犯ともいえるわけです。
そのような本質をややコメディテイストで表現しているのが本作の描写ではないでしょうか。
労働階級舐めんなよ!
このように見ていきますと、本作の根底にあるのは「労働階級舐めんなよ!」ではないでしょうか。
幾分コメディっぽく描かれていますが、世の中の殆どを作り上げているのは労働階級の人達です。
レイおじいちゃんをはじめマグワイア兄弟を中心としたあらゆる世代を巻き込んだ戦いは圧巻でした。
どうしても忘れられがちな下町の労働階級の日々の努力、そうした人達の積み重ねの上に社会は成り立っています。
こうした下町の情緒は今や忘れ去られつつありますが、とっても温かみや懐かしさすら感じさせるものです。
労働階級ならではの奮闘がしっかり描かれたことが本作の何より素晴らしい点でしょう。
閉塞感に満ちた今の世へ
いかがでしたでしょうか?
本作はゾンビ映画をパロディしつつ、実はそれを通して閉塞感に満ちた今の世へメッセージを発しています。
それは世代を超え、一致団結して苦境を乗り切ろうとする人々の繋がり・絆の大切さです。
無職の若手世代から取り残された老人世代までがゾンビの出現を前に手を組む姿に感動せずにはいられません。
しかし、それとて全体を考えてのことではなく彼ら一人一人が自分に出来ることを頑張っていった結果です。
個人主義のスタンスが横行している中で他者の為に動ける人達がどれ程いるでしょうか?