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映像化不可能とまで言われた乾くるみによる原作小説を映画化した、堤幸彦監督の『イニシエーション・ラブ』。
主演は松田翔太、ヒロインを演じたのは前田敦子です。
絶対に愛しぬくと思っていた恋人と、いつしかすれ違うようになってしまう。
一見そんな若者同士の切ない恋愛物語かと思いきや、最後に用意されたどんでん返しでミステリーとしても楽しめる作品です。
公開時には、「最後の5分全てが覆る。あなたは必ず2回観る。」のキャッチコピーでも話題になりました。
あらすじだけでは分からない予想外の結末に驚き、散りばめられていた伏線の答え合わせをしたくなった人も多いでしょう。
ミステリーとラブストーリー、2つの顔を持つ『イニシエーション・ラブ』。
ストーリーに残された幾つかの謎と、ヒロイン繭子の心情を考察していきます。
繭子の妊娠の本当の相手は誰?
“マユ”と“たっくん”の関係に暗雲がたちこめるきっかけとなったのが、繭子の妊娠でした。
二股をかけていた繭子ですが、この時の子どもの父親は本当に辰也だったのでしょうか?
妊娠のタイミング
繭子が妊娠3か月と診断されたのは、1987年の8月23日。
3か月前の5月は当然、7月に合コンで出会う夕樹とは知り合ってすらいません。
そのため、浮気相手だった夕樹が妊娠の相手である可能性はゼロ。
子どもの父親は辰也、もしくは別の男性ということになります。
第3の男?
辰也と夕樹をどちらも“たっくん”と呼び、巧妙に二股をかけていた繭子。
辰也も夕樹もすっかり騙されているので、さらに別の男性とも関係を持っていたのでは?と勘繰りたくなります。
ですが、繭子の側に他に深く付き合っていた男性の影は特になく、第3の男性の可能性は推測の域を出ません。
また、繭子は最初のデートで夕樹のことを誤って“たっくん”と呼びかけています。
これは後に辰也も犯すミスですが、5月以前に浮気を始めていたならもっと浮気慣れをしているはず。
何より5月は辰也がまだ静岡におり、2人が近くにいた時期です。
この時点で、辰也以外の男性と関係を持っていたとは考えにくいでしょう。
原作とのちがい
実はこの妊娠についての一連のシーンで、原作にはあったのに映画ではカットされているものがあります。
それは、辰也の避妊していたはずなのにどうして、という戸惑いです。
もし、これが台詞やモノローグで挟まれていたなら一気に夕樹以外の男性との浮気の疑惑が大きくなっていました。
しかし、辰也は動揺しているものの、戸惑いや不信がる素振りは見せていません。
おそらく、この部分はあえてカットされたのではないでしょうか。
そうすることにより、映画では意図的に辰也以外が父親である可能性を排除したのだと考えられます。
妊娠を喜ばない繭子
もしも妊娠していたら結婚しよう、と辰也に告げられた繭子。
繭子はそれまで“たっくん”こと辰也のことを愛しているように見えていましたが、ここで違和感が生まれます。
全く嬉しそうではないのです。それどころか、生理が来ないことを打ち明ける際も、彼女はまるで怯えているような様子でした。
もちろん、いわゆるできちゃった婚が嫌だという理由もあるでしょう。
遠距離のさなかの結婚、出産話に不安を覚えたとも考えられます。
しかし一概には言えないものの、大好きな恋人の子を身ごもることを全く肯定的に捉えていないのは不自然ではないでしょうか。
繭子には辰也が妊娠話を喜ばない予感があったと考えられます。