だからこそ、久太郎の後をつけ玉之丞を見つけ出すのでした。
もしかすると、口では語れない玉之丞に対する第六感も働いていたかもしれません。
玉之丞に教えてくれた家族の大切さ
強面で寡黙。人から理解されず、なかなか感情を表に出せない久太郎は、多くのことを玉之丞から学びます。
妻子を加賀に置いて、江戸で剣士として士官を果たそうとしたときも、家族に十分話をすることができませんでした。
そのため江戸では、さみしい思いをする久太郎です。玉之丞はそんな時、そばにいてくれる人のありがたさを教えてくれます。
寡黙な久太郎が家族を説く
玉之丞を抱きながら、新右衛門と刃を交わせるシーン。好戦的な新右衛門に九兵衛はこのように語り掛けます。
お前にも家族がいるであろう。家族が泣くぞ。
引用:猫侍/配給会社:AMGエンタテイメント
家族が傍にいて、自分のことを心配してくれる、ということを久太郎は玉之丞から教えてもらいます。
玉之丞を捨てた際、雨が降り出し、久太郎は玉之丞を心配するように外を見ていました。
その時すでに、自分の傍に何も言わずいてくれる家族のありがたさを痛感していたのです。
家族のためであれば、どんなことでもできる。逆に言えば家族がいなければ、できることは限られている。
玉之丞がいない生活といる生活の両方を経験したからこそ、久太郎は新右衛門に家族のことを聞くのでした。
玉之丞にしてあげたことは、娘にもしてあげたかったこと
玉之丞との生活に苦労しながらも、その中に楽しさを久太郎は見出します。
例えばエサを選り好みする玉之丞のためにさまざまな物を試し、時には自身が楽しみにしている大福も差し出しました。
さらに玉之丞のために、盗みだって働きます。作品中では、時々加賀に置いてきた娘の姿が思い出されていました。
それはこれらの行動が父親としての行動であり、娘にしてあげたかったことだからです。
だからこそ、玉之丞を自分の子どものように思い、娘からもらったお守りの紐を玉之丞の首輪にするのでした。
招き猫は金だけでなく、人も招き…
映画冒頭、自宅でいつもの強面を前面に出しながら、久太郎は招き猫の中身を探ります。
その際に、招き猫の効能について嘆くのですが、招き猫はきちんと招くべきものを招いていました。
おっかさんに聞いたことあります。白い猫は人やお金を招く、招き猫なんですって。玉がみんな呼び寄せてるかもしれませんね
引用:猫侍/配給会社:AMGエンタテイメント
こちらはお梅のセリフ。久太郎はもちろんお金も欲しいのですが、それよりも欲していたのは…?
人のぬくもり、傍にいる人のあたたかさ
久太郎は妻子を加賀に置いてきており、江戸でさみしく士官の先を探していました。
寡黙で強面、人からなかなか誤解を受けやすい性格のため、久太郎には人が寄り付きません。
しかし、玉之丞だけは久太郎のそばから離れませんでした。結果的に玉之丞はお梅や前場新助も招き入れます。
久太郎自身はそれを認めたがりませんでしたが、心の中では傍に人がいることのあたたかさを感じていたのです。
だからこそ、玉之丞に家族の大切さを教えられました。
金、人、そして笑顔
仕事の依頼によって、久太郎は一時的にですがお金を手に入れることができました。
さらに、お梅や新助も久太郎のところへ招かれてやってきます。そしてラストシーンでは、玉之丞は久太郎に笑顔を届けるのでした。
映画ラストで、縁側に玉之丞を座らせ何度も名前を呼びかける久太郎。その時、この映画で初めての笑顔を久太郎は見せます。
つまり玉之丞のおかげで、久太郎は笑顔を手に入れたのです。
そこまでに至る北村一輝の演技も圧巻ですし、玉之丞がそこまで久太郎の人生に影響を与えたことも圧巻。
もしかすると、玉之丞という白猫そのものも、映画冒頭に登場した招き猫が招いたものかもしれません。