妊娠のため医師への道は諦めましたが看護師としてステップアップを望むシンディ。
しかし上昇志向など全くないディーンには彼女の気持ちが理解できません。
イラつくシンディと感情を逆なでするディーンにはある決定的な違いがありました。
喧嘩の発端と修復方法の選択ミス
喧嘩の発端は愛犬の事故死でディーンがシンディを責めたことです。
既に十分責任を感じていたシンディを責めるべきではありません。
そのことはディーンも気づいていましたが謝ることもできないのです。
謝る代わりにホテルに行こうと言い出し嫌がるシンディの前でReservedの電話をします。
そして偶然出会ったボビーをネタに感情をむき出しにするディーン。
林に逃げ込むシンディは心の中で『ああ、もう本当に嫌だ』と思ったことでしょう。
『未来ルーム』でシンディが見たものとは
安っぽいラブホテルの『未来ルーム』でシンディが見たのは自分の心です。
ホテルのベッドで愛を確かめ合うどころか二人は愛の欠片も無いことを確かめてしまいます。
夫婦喧嘩はセックスで修復というのは男側の理論です。
シンディは自分が自分の夫を生理的に拒絶していることに愕然とします。
不均衡な愛は崩壊するしかないのか
収入や仕事、身体能力や知能指数など不均衡なものは現実にたくさん存在します。
それでは不均衡な愛とはいったいどんな愛なのでしょうか。
それは『プライオリティの違い』です。
不均衡な愛が続かない理由
ディーンもシンディもフランキーを中心に日々の暮らしを大切にしています。
しかしその方法が二人は全く違うのです。
総合的な愛の量は同じでもどこに重きを置くかが違えば部分的には不均衡が生じます。
男女という性の違いそのものがすでに不均衡を発生させるのです。
現実主義者とロマンチスト
ディーンは娘が明るく楽しく暮らせればそれで良いと思っていますが、シンディは社会性と安定した未来を望んでいます。
ディーンはロマンチストですがシンディは現実主義者なのでしょう。
視点を変えればどちらも正論です。
逆にいうなら自分が「是」なら相手を「非」とするしかありません。
そもそも愛に是非を問うのはナンセンスです。
歪な形は一点に負荷がかかり過ぎいずれ壊れてしまいます。
ブルーバレンタインがラブストーリーといわれる理由
この映画のテーマである『誕生と崩壊』を言い換えるなら永遠に分かり合えるはずのない男と女でしょう。
しかしその根底には確かに存在した『愛』が流れ続けているまさにラブストーリーです。
愛が誕生するのも崩壊するのもほんの些細な発端なのかもしれません。
この映画はありふれた男と女がふとしたきっかけで愛し合い7年かけて傷つけ合い壊れ去ったという物語です。
あまりにも身近であまりにもリアルなゆえに『せつなさ』や『やりきれなさ』を覚えずにはいられません。
観た人の人生観や経験値など『どう生きてきたのか』によって極端に感想は変わるでしょう。
特に男性と女性では全く違う印象を持つと思います。
それがこの映画の凄いところなのです。