若さ故の過ちといえば聞こえはいいですが、なまじ男女の関係が絡むだけに問題は極めて深刻です。

そもそもカミーユ自身メンバーが肉体関係を持つ場に居てもそれに流されるような人ではありません。

つまり全く心にもない行動・言動で仲間達に裏切り行為をしてしまったことが後悔の原因となりました。

自身を安売りしてしまった

マンガでわかる! 安売りするな!「価値」を売れ!

そしてデヴォンに肉体関係を持とうとしたことは同時に自分を安売りすることにもなってしまうのです。

カミーユの中ではまだ”セックス”と”ジェンダー”の双方において女性であることへの受け入れが出来ていません。

出来ていたら最初からスケート・キッチンというグループには所属していないでしょう。

にもかかわらず自身を安売りして無理矢理デヴォンに媚びるような真似をしてしまいました。

自身の内面にある哲学に反するようなことをしたとなれば、同時に自分をも裏切ったことになるのです。

背徳感

母との関係で見たとき、一番彼女が後悔したのは背徳的な行為を親に隠れてやっていることです。

まだ心も体も自立した女性になりきっていないのに、酒やタバコ、ナイトクラブなどに顔を出しています。

アンダーグラウンドな場に顔を出したことは母を裏切るような行為だとカミーユの中では思われたのでしょう。

そしてその表面化しない母への背徳感がデヴォンやジャネイに関係を絶たれることで後悔となったのです。

真面目過ぎる彼女だからこそそのような思いに駆られてしまったのかもしれません。

“男性的な女性”を目指す人達

女性の解放 (岩波文庫 白 116-7)

ここで改めてタイトルの意味について触れると、スケート=男性、キッチン=女性の象徴であるといえます。

つまり女性でありながら男性的なクールさ・格好良さを目指すという挑戦的で意欲的な姿勢が前に出ているのです。

彼女達がタバコを吸ったり男性との肉体関係を持つのもそういう男の背伸びしたがる傾向への憧れから来ています。

だから彼女達は女性でありながらいわゆる”女子会”のような和気藹々さではなく、斜に構えたクールな関係でした。

でもそれを特別な社会問題へと繋げるのではなく等身大の青春の一頁として描いており、説教臭さがありません。

それが見る人達の共感を逆に呼ぶ作品となったのではないでしょうか。

性の壁という幻想

性幻想と不安

こうして見ていくと、最終的には“セックス”や”ジェンダー”が所詮社会が作り出した幻想でしかないことに気付きます。

しかし、こうした青春や性の問題が絡むと何故か我々は男女という関係を安易に恋愛や肉体関係に還元しがちです。

そのようなステロタイプの価値観に対し、斜に構えながらもストレートに生きる女性達の内面を的確に描いています。

今の私たちに求められることは男女以前に一人の人間として見て接する姿勢なのかもしれません。

カミーユ達もいずれ女性であることを受け入れるのかもしれませんが、それは自分達の意志で行うべきことです。

そうしたジェンダーフリーに対する考え方を教えてくれる格好の材料として、一つ面白い作品ではないでしょうか。

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