ティーナの父親もそんな精神病院で守衛として従事し、病院に収監されていたトロールの夫婦からティーナを引き取って育てたのでした。
ティーナは父親が大勢のトロール達がいて、その中に本当の両親がいたことを隠していたことでトロールとしての悲しみが目覚めたのでしょう。
赤子を育てようと決意
廃墟と化したヴォーレに貸していた離れに届いていた赤子は、おそらくティーナとヴォーレが結ばれた時にできた赤子です。
トロールは人間とは逆に卵子を男性の膣中に植え付け、子を授かるのではないでしょうか?
この赤子は定期的に生み出す無受精卵児ではなく、ティーナの卵子でヴォーレが妊娠し出産をした赤子だと考えられます。
母親になれた喜び
ティーナは赤子の匂いを嗅ぎ、自分とヴォーレの匂いを感じたのです。
そして箱に入っていたフィンランドのカードを見て、ヴォーレがフィンランドに辿りつき産んだ子を送ったのだと悟りました。
子供は授かれない思っていたティーナには思いがけないことでしたが、腕の中で無垢な瞳で見つめる赤子に母親としての喜びが芽生えたのです。
ティーナは一人ではなくなりましたが、ヴォーレからフィンランドにはトロールの集落があると聞いていたティーナはどうするのでしょう?
母親としての自覚と覚悟
ティーナはむずがる赤子を不器用に抱き森の中を歩き、動物的本能なのか母親としての本能なのかティーナは虫を捕まえ赤子に与えます。
虫を食べ機嫌を直した赤子を見たティーナは赤子を育てる決意ができたのです。
そしてもし再びヴォーレがこの森を訪れることがあれば、その時はティーナはトロールとしてヴォーレを受け入れるでしょう。
それからはトロールとして生き、子孫を増やしトロールの住む森をつくるとも考えられないでしょうか?
ボーダーという心の線引き
『ボーダー 二つの世界』の原作者ヨン・アイヴィデ・リンドクヴィストは、『ぼくのエリ 200歳の少女』の作者でもあります。
この小説の中では人間とバンパイアとの純愛を描いていて、性的描写や差別に関する表現に通じるものがありました。
時に人間の卑しさや残酷な部分、また差別される理由を表現するために、小説や物語の中に怪物や妖怪をモチーフに出すことがあります。
人間こそ生まれつきの病気や容姿、人種などで、差別やいじめの発端となるボーダーラインを勝手に作っていると訴えているのです。
トロールであるティーナは人間との共存を捨てたような最後でしたが、人間の潜在意識を浮き彫りした美しい作品と評価を集めました。