だからこそ、自身の文に自身が影響されたのです。つまり脚本を書きあげたことによって、ウェンディは未知に挑戦する勇気を得ました。
そのため外出など苦手なものにチャレンジできるようになり、最後には施設にいなくても、オードリーとともに生活できるまでになったのです。
警官が見せる自閉症の方への寄り添い方
映画の中でも多く疑問として出されているのが、男性警官になぜウェンディは初見で心を開いたのかということです。
それには、最大限相手の理解に努めようとする、自閉症との付き合い方の基本が描写されていました。
クリンゴン語とは
自閉症を抱えている人は、ある特定のものにこだわりを持つ傾向があるとされています。
本作のウェンディの場合は、スタートレックに対するこだわりは人並み以上です。
だからこそ、スタートレックの中で使用される、クリンゴン語も使いこなせるのでした。
『スタートレック』の映画内だけで使用されるはずのクリンゴン語ですが、クリンゴン語で日常会話ができる人もいるようです。
少数の人々(大部分は熱心なスタートレックファンか言語マニア)は、クリンゴン語で会話できる。
引用:https://ja.wikipedia.org/wiki/クリンゴン語
ウェンディ自身は、熱心なスタートレックファンであるため、このクリンゴン語を使うことができます。
そして、もう一人クリンゴン語を使いこなせる人がいるのでした。
ウェンディを理解してクリンゴン語で話しかける警官
作品内でクリンゴン語を使いこなすもう一人は、ウェンディが心を開いた男性警官でした。
クリンゴン語で話しかける警官に対して、ウェンディはクリンゴン語で返します。
男性警官もおそらくスタートレックファンであり、「ウェンディがファンであること」を知っている証拠でもあります。
男性警官はウェンディの捜索命令があった時点で、ウェンディが逃亡する理由や基本的な情報を把握しているのです。
自閉症の方がこだわりを持っているものを拒否せず共感しようとする姿が、ウェンディの心を開いたのでした。
クリンゴン語なら初対面でも長い会話が可能
ただでさえ自閉症を抱えるウェンディにとって、初対面の相手は不安を抱える相手です。
そこで警官に追い込まれているのであれば、当然混乱しているでしょう。
それでも男性警官に心を開いたのは、クリンゴン語で、しかも映画の中のセリフを使いながら話しかけられたからです。
自分がこだわりを持っているものは、安心できるもの。ウェンディにとっては『スタートレック』に関連するものがそれにあたります。
男性警官の話すクリンゴン語は、ウェンディに安心感を与えたのでした。
だからこそ男性警官の言葉に拒否という反応ができたし、説得に応じて一緒についていくことを決めたのです。
自閉症の方の「苦手」はさまざま
自閉症の方と一緒に生活をするためには、その方の「こだわり」や「苦手」がどこにあるのかを理解する必要があります。
こういった「こだわり」や「苦手」を頭ごなしに拒否するのではなく、どう付き合うかが傍にいる人の大切なマインドです。
映画内ではスコッティや先述した警官、そしてスコッティの息子は、ウェンディに対して初見から否定的に接することはありません。
苦手がどこにあるのか、こだわりを通じて心を通わせられないか、すべて理解することは難しいですが、その気持ちに自閉症の方は敏感です。
本作ではこれらの登場人物の姿勢で、自閉症を持つ方の自立に向けて、傍にいる人が何を大切にすべきかを表しています。
自立とは言ってもサポートは必要
自閉症の方の「苦手」は、社会生活に影響が出るものもあります。
そのために、サポートが必要なのですが姉のオードリーはそれが分からず、妹を施設に預けるのでした。
一方、ラストシーンでは愛犬のピートがオードリーの家に入っていく様子から、ウェンディも一緒に暮らしていることが分かります。
オードリーは、ウェンディをサポートする方法を理解したのです。
サポートして「あげる」でなく、何ができ、何が苦手か
オードリーは、母親の死後ウェンディの世話をしていましたが、結婚や妊娠に伴ってウェンディの世話ができなくなりました。