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映画「アトミック・ブロンド」は2017年に公開されたデヴィッド・リーチ監督製作のアクション映画です。
キャストも主演がシャーリーズ・セロン、そしてその恋仲にソフィア・ブテラなどセクシー系女優を中心に集めています。
リーチ監督は本作を作るに当たって『ジョン・ウィック:チャプター2』とどちらを取るかで葛藤したことも有名な話です。
舞台は冷戦終結後のドイツを舞台に一人奮闘するロレーン・ブロートンの孤独な戦いが展開されていきます。
本稿ではサッチェルの正体をネタバレ込みでしっかり掘り下げて考えていきましょう。
また、時計が狙われた意味やパーシヴァルを殺害した理由なども併せて紐解いていきます。
女性スパイ版『ボーン・アイデンティティー』
本作のテーマはロレーン・ブロートンの「アイデンティティー」についてです。
ロレーン・ブロートンは女スパイの主人公としては実はかなり没個性気味に描かれているのではないしょうか。
中性的で男性のような動きもするし、近づいてきた女性スパイと同性愛に近い関係にもなるし、一見クールです。
しかし、それはロレーンがLGBTであるとか女であることを自ら捨てたとかいうことを意味しません。
彼女は正体が最後まで分からない構造になっているのです。
その意味では主人公の正体を解き明かす『ボーン・アイデンティティー』の後継者といえる作品でしょう。
サッチェルの正体
さて、本作で一番の見所となるのは二重スパイとして噂に名高いサッチェルの正体です。
ロレーンの目的はそのサッチェルへの復讐ですが、これが予想外の結末に繋がります。
ここではサッチェルの正体についてじっくり掘り下げて考えていきましょう。
サッチェル=ロレーン
結論からいえば、サッチェルの正体は何と当のロレーン・ブロートン自身でした。
彼女はMI6のスパイとして潜入していたアメリカのCIA所属のスパイだったのです。
そう、ロレーンは徹底して自作自演をしていたわけであり、話全体が彼女の仕組んだ狂言でした。
様々なスパイが入り乱れての攻防が繰り返されるのですから迂闊に自身の正体は明かせません。
冒頭とのジョン・グッドマン演じるエメット・カーツフェルドとのやり取りも芝居だったのでしょう。
もう一つの偽名
弁護士エリザベス・ロイドという偽名をもう一つロレーンが使っていたことも伏線となっています。
この時彼女はKGBの回し者たちに襲撃されるのですが、偽名を使っても危険は生じるのです。
更にその時彼女が後に同性愛の関係となるDGSEのスパイ・デルフィーヌも居ました。
この状況では偽名を一つとはいわず二つくらい使って徹底的に作り込まないと負けます。
裏の裏を読んでの知略の攻防がスパイに一番大切な要素であり、その為にわざわざ偽ったのでしょう。
デルフィーヌとの関係性
一つ疑問なのは自己防衛を徹底しているロレーンがデルフィーヌとの肉体関係に及んだ理由です。
一つにはデルフィーヌがまだ若く性格が純粋であったことから無碍に出来なかったのでしょう。