実はここにもう一つのどんでん返しがあるのです。

パーシヴァルもまた裏切り者であった

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何と終盤でパーシヴァルもまたKGBの内通者としてMI6に潜り込んでいたのです。

これがロレーンの行く先々にKGBの回し者をはじめ敵が次々襲いかかる理由にもなっています。

彼もまたMI6にいるロレーンの情報を悪用してKGBにリークしていたのではないでしょうか。

ドイツで合流したときもロレーンを貶めたり騙したりするようなことしかしていませんでした。

結局の所ロレーンとパーシヴァルは裏切り者という共通点を抱えた似た者同士だったのでしょう。

デルフィーヌの仇討ち

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感情面で見るとロレーンがパーシヴァルを殺害した動機はデルフィーヌを彼に殺されたことでした。

ただし、ガスコインの時もそうですが、これはあくまでも副次的なものでメインの動機ではないでしょう。

ガスコインにしてもデルフィーヌにしてもスパイである以上ロレーンは決して本気の関係ではありません。

肉体関係を持ったとしても、あくまでも情報収集という仕事の関係があってのことです。

だから、デルフィーヌの仇討ちは裏切り者だから始末するという業務にもっともらしい理由をつけたのでしょう。

彼女自身は最後まで誰一人スパイを心から信用などしておらず、あのサングラスがそれを示しています。

赤を着てアメリカに戻る意味

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ロレーンはCIAの一員という本来の自分に戻って赤のロングコートを着てカーツフェルドと共に帰りました。

それは彼女が偽りの自分から解放されたこと、即ち新しい時代と人生の始まりを告げているのではないしょうか。

本作は色彩表現も力を入れていますが、黒や青など暗いものが多いのは彼女の冷徹な心を表わしています。

デルフィーヌとの色気のシーンだって決して完全な赤ではなくやや青味がかった桃色で完全ではありません。

だからこそラストシーンで赤を着て幾分解放された表情と言葉を見せる仕草が対比として輝くのです。

本作は正にラストに漸く自分のアイデンティティーを取り戻す物語となっているのです。

スパイ映画を否定するための映画

映画パンフレット 否定と肯定 ミック・ジャクソン監督 レイチェル・ワイズ トム・ウィルキンソン

本作は一見痛快なスパイアクション映画を描いているようで、実はスパイ映画を否定したいのではないしょうか。

わざわざ冷戦終結後という舞台設定を選んだのもそうですが、本作はスパイをどこまでもドライに描いています。

従来の「007」「ミッションインポッシブル」などの殆どのスパイ映画はどこかで“ヒーロー映画”でした。

本作はその意味で女性スパイを主人公に据え、その主人公が自分を徹底的に押し殺し正体をラストで明らかにします。

こうやって破壊を繰り返すことでスパイ映画の裏街道を駆け抜けたアンチスパイ映画ではないでしょうか。

故に評価も賛否両論別れることとなりましたが、ビジュアル・アクション・ストーリーの走攻守が凄くいい作品でした。

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