だからこそ辛い役目を背負わせることになっても最後までボディガードとして利用したのです。
朝でなければその魂胆を見抜かれて損切りされていたのではないでしょうか。
吊り橋効果
そしてもう一つ挙げられるのが命の危機に瀕した男女がその場で経験する吊り橋効果ではないでしょうか。
どんなに情の交わらない関係でも行動を共にしていく内に何かしらのような絆は芽生えるものだといいます。
朝と冴子はお互いに仕事以上の関係ではないとはいえ、一緒に行動していく内にそうした関係になったのでしょう。
それが命の危機と重なって一時的な吊り橋効果を生み、冴子をして朝にキスをさせる方向へ持って行かせたのです。
逆にいえば、命の危機に晒されない限り冴子が朝にキスをすることなど有り得なかったのではないでしょうか。
だからこそこのキスシーンには男女の色気や雰囲気は微塵もありませんでした。
車に冴子を乗せようとした男達
物語中盤では警察を名乗って冴子を車に乗せようとした男たちが居ました。
そのことを訝しんだ朝たちによって難を逃れますが、彼らの正体は何者でしょうか?
あらすじを丁寧に追いながら見ていきましょう。
南雲荘介のSP
正体は中盤で明らかとなりますが、南雲荘介が手配したSPたちでした。
何故かというと、過去に南雲が起こした麻薬や男女関係などの証言者に冴子がなる可能性があるからです。
どんな政治家もスキャンダルが汚点となってしまってはキャリアに傷がつき、最悪の場合辞職も有り得ます。
であれば、何としてでもそのような憂いは断っておきたいというのは当然の心理ではないでしょうか。
幾ら雇われだとはいえ、冴子がしたことは政治家を罠に嵌めて貶めるという大犯罪なのですから。
公の因縁
冴子は物語の中で公私の双方において人間関係の深い因縁があったことが判明します。
その内公の因縁が政治家の南雲荘介だったわけであり、SPたちはその象徴でありましょう。
何だか表向き冴子が悲劇の主人公っぽいですが、きちんと前向きに精算しなかったことが原因です。
だから悲劇というよりは単なる自業自得であり、自分が払うべきだったツケを先延ばしにしているに過ぎません。
つまり冴子は自身の人間関係の精算に朝と梅津を巻き込んでしまった格好となるのです。
大事な問題から逃げ続ければそれは闇となって自分を追い続けてくることをSPたちはよく表わしています。
位置を嗅ぎ取っていた理由
一つ疑問なのはどうしてSPたちが冴子たちの行く先々を予想していたかのように現われたのかということです。
出現場所まで正確に嗅ぎ取ることなどGPSか何か追跡用の装置を車につけておかないと無理でしょう。
本編で直接の描写はないものの、南雲はSPたちに冴子の位置情報を特定できるようにしていたと考えられます。
もしくは後述する冷酷な経営コンサルタントの柿沢による知略が裏で働いているか…そのどちらかでありましょう。
いずれにしても手の込んだことをする強かな連中であることだけは間違いありません。
柿沢を水死させた犯人
南雲と冴子の因縁には冷酷な経営コンサルタントの柿沢が一枚裏で噛んでいました。
そんな彼はラストに何者かによって水死体となって発見されるのです。