しかし、そんな派手で明るい鬼瀬が奈緒の為に強い自分を作ったのは弱い自分という暗い過去があったからです。

5年前別の男と交際を始めた母の姿に絶望し、自分は母にとって大事ではなかったのだと思い自暴自棄になりました。

ここで誰にも心を見せられず、孤独を抱えそれを覆い隠すために強い自分を作り上げ不良となったのです。

しかしそれをただの肉体的な強さだけではなく精神的にも強くなることを目指したのでしょう。

このプロポーズは単なる粋がっての格好つけではなく弱い自分から強い自分になる宣言でした。

宗介が鬼瀬を突き放した意図

そんな風に強い自分をセルフイメージし、戸惑いながらも奈緒と仲を深めていく鬼瀬。

付き合っている報告も兼ねて報告へ行ったとき、宗介は一度鬼瀬を突き放してしまいます。

果たしてそこにはどのような意図があったのでしょうか?

命がけ

愛は命がけ (ハーレクイン・プレゼンツ作家シリーズ別冊)

まず宗介が鬼瀬を突き放したのは彼の「命がけ」という言葉を聞いてからでした。

命がけということはいざ何かあれば死地へ飛び込んでいく無謀な人だということです。

昔であれば賞賛されたかも知れませんが、同時にそれは自分を大切にしないことでもあります。

ずっと平和な家庭を奈緒のために作っていた彼からすればそれは相容れない危険思想に映ります。

その辺りの温度差を感じ取ったからこそ彼は鬼瀬に強く当たったのでしょう。

奈緒がヘタレになった理由

そしてこの「命がけ」という言葉で宗介の中で連想されたのが奈緒が両親を失った過去でした。

9歳の時に両親を失ったことがトラウマで奈緒はヘタレになってしまいます。

鬼瀬の強さが後天的な努力で勝ち得たものだったのと同様に奈緒の臆病さも命を失う怖さからです。

鬼瀬とは違う形の孤独を奈緒がずっと抱えていたことに宗介は頭を抱えて悩んでいました。

宗介は鬼瀬がもしかたら奈緒のトラウマをより一層悪化させるかもしれないと思ったのでしょう。

自己犠牲の否定

自己欺瞞と自己犠牲 (双書エニグマ)

こうした宗介の突き放しは同時に自己犠牲の否定という裏テーマが隠れています。

表面上古典的な「俺がお前を守ってやる」のようで、実は鬼瀬も奈緒も仲間や身内に守って貰っているのです。

そしてそれは鬼瀬と奈緒の関係も同じことで、二人とも実はお互いに守り守られています。

宗介は鬼瀬の存在や人格を否定したわけではなく、自己犠牲の精神や行動の在り方を否定したのです。

家庭を作って守るのに必要なのはそのような危険な強さではなくもっと平和的で優しく温かいものでした。

そしてそれが終盤の展開で結実していくことになります。

権瓦からの暴行に耐えた目的

鬼瀬はかつて医学部志望だったのに五年前の喧嘩が元で権瓦の人生を台無しにしてしまいました。

その因縁解消と矢代との関係性の精算もあって、鬼瀬は再び権瓦と対峙して傷つくことを選びます。

権瓦からの暴行に必死に耐えた目的は何だったのでしょうか?

自分への罰

罪と罰 3 (光文社古典新訳文庫)

まず鬼瀬としては権瓦の人生を自分が潰してしまったことへの責任を罰として受けたのでしょう。

奈緒や仲間達との交流、そして宗介との挨拶で彼は自己犠牲前提の生き方の危険性を学びました。

もしここで権瓦に暴力を振るってしまえばそれはまた以前の自己犠牲に逆戻りすることを意味します。

相手を傷つけるだけの強さでは単なる馬鹿の力自慢でしかなく、権瓦と同じ穴の狢です。

だからこそ何があっても人を傷つける真似だけは断じてするまいと心に誓っていたのでしょう。

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