出典元:https://www.amazon.co.jp/dp/B07HJJFW8P/?tag=cinema-notes-22
本作は1987年のパク・ジョンチョル拷問致死事件からの民主化闘争を題材にチョン・ジュナン監督が映画化した作品です。
主演にはキム・ユンソクやハ・ジョンウ、カン・ドンウォンを据え、非常に重厚なドキュメンタリー映画になっています。
その完成度の高さに観客動員数の多さはいわずもがな、たとえば以下の賞を受賞しました。
第39回青龍映画賞最優秀作品賞、主演男優賞、撮影照明賞
引用:ttps://ja.wikipedia.org/wiki/1987、ある闘いの真実
本稿ではその中でも民主運動家キム・ジョンナムが逃亡した真意をネタバレ込みで考察していきます。
また、最初の死者が与えた影響やデモに示された実情の中身などもあらすじを追いながら掘り下げて考えていきましょう。
学生運動、その本来の意義
本作ではかつて日本でも大々的に起こった「学生運動」がピックアップされています。
学生運動とは社会・政治に不満を抱いた学生達が抗議のデモなどで革命を起こすというものです。
日本だと2008年公開の「実録・連合赤軍あさま山荘への道程」辺りが特に有名でしょうか。
本作はその意味で後ろ向きに扱われがちな学生運動が極めて前向きでヒロイックな作品として描かれています。
“自由を目指す”のが本来の意義である学生運動を本作においてどう調理しているかを意識して見てみましょう。
キム・ジョンナムの逃亡の真意
史実でも大きな謎の一つとされているのが民主化運動家キム・ジョンナムが逃亡した真意です。
彼は指名手配犯として扱われていながら、民主化運動を裏から進めた影の実力者になっています。
果たして彼が逃亡していた真意はどこにあるのでしょうか?
真打ちは表に出ない
まずキム・ジョンナム程の実力者が表に出ないことはそのまま真打ちが決して表に出ないことを意味します。
歴史の流れを見ても歴史を変えた人物として取り沙汰されるのは常に氷山の一角に過ぎません。
しかし、本当はその裏で暗躍しているキム・ジョンナムのような人こそが歴史を動かしているのです。
これは何の分野でもそうで、一度表に出て派手に目立つと注目を浴びる分レッテルも貼られやすくなります。
そうなると有名になった後例えばある拍子に落ちぶれるとその反動で今度は叩かれる側となるのです。
キム・ジョンナムは正にそのような“真打ち”と呼ぶに相応しい人物だったのではないでしょうか。
打倒軍事政権の下地を作る
一番の目的は打倒軍事政権にあり、後半ではその為に国から目をつけられ逃れるシーンが目立ちます。
決して弱腰だから逃げるのではなく、あくまでも重要機密事項を民主化運動関係者へリークするためです。
軍事政権という国家の巨大な陰謀に立ち向かうにはジョンナム一人では余りにも無力すぎます。
だからこそ彼はハム神父やハン・ビョンヨンなどの実力者達との繋がりで突破口を作るのです。
影の実力者として彼が出来ることはあくまでもその下地を作るための地均しを行うことにあります。
指導者たる存在が明確な方向性を示した上でなければ運動を起こすことは出来ません。