しかしエイミーはそれを望んでいません。そんなストレスからも、アルコールに走るのでした。
世間の注目と期待
後述しますが、エイミーはまったく有名になることに憧れておらず、むしろ有名になることを恐れていました。
しかしそれとは裏腹に、世間はエイミーの歌声を聞きたいし、エイミーそのものの動向や考えが気になっています。
それゆえ、パパラッチも過熱するし、エイミーの周りにあるお金のにおいにさまざまな人たちが寄ってきました。
エイミーにとっては、それこそ悪循環であり、世間がそっとしてくれないから仕事をしなければなりません。
そんなストレスが、アルコールや薬物に走らせる要因の1つだったのでしょう。
エイミーにとっての理想
エイミーは有名になることを嫌います。それは、エイミーにとっての理想があるからでした。
エイミーはよく言ってた。こんなショーをやるのが夢と。小さなクラブで客も少人数。
引用:AMY/配給会社:KADOKAWA
これはピアノのサム・ベスティが、言ったセリフです。
エイミーは純粋に音楽とだけ付き合いたいのであって、誰かに褒めてもらいたいわけでもなく、理解してほしいわけでもありません。
ただただ、自分の気持ちを歌うことのみに集中したかったのです。
しかし、有名になれば「誰かの期待に応えなければ」「プロデューサーやアシスタントが求めるものは」となります。
純粋に音楽との関係を築きたいエイミーにとって、それらは邪魔な存在であり、恐れるものでした。
だからこそ、有名になることを恐れるのです。
有名になることで出る症状
映画内で語られたエイミーの「病気」と取れる症状は、このようなものがありました。
- 過食症
- うつ
- アルコール依存
- 薬物依存
これらの症状をさらに悪化させてしまうのが、有名になることの弊害の1つです。
頭が変になる
ギャリー・マルホランドのインタビューで、自分が有名になるのか、と聞かれるとエイミーはこう語ります。
売れたらいいと思うときもあるけど、私は有名にはなれないわ。もし有名になったら対処できなくて、頭が変になる
引用:AMY/配給会社:KADOKAWA
有名になると頭が変になるとあることからも、神経的な症状が現れてしまうのです。
おそらくそれには、これまで書いたようなことが理由に当てはまります。
エイミーにとっては、有名になることで自分自身の健康が害されることは分かっていたのです。
再発する過食。環境の変化にうつ病は弱い
ブレイクとの最初の別れから何とか立ち直り、その証であるブレイクに関する曲を作り上げたエイミー。
そのエイミーを、肉親で唯一素直に愛していた祖母が亡くなる悲劇が襲います。
その時、エイミーは15歳で発症していた過食が再発。収録中であっても、過剰な飲食をしては嘔吐を繰り返します。
またエイミーのうつ病は、環境の変化によるストレスがかかると、症状が悪化するものでした。
有名になればなるだけ、エイミーは心穏やかになれません。病気のせいで、曲作りもストップしてしまうのです。
失恋や人生の苦しみは、乗り越えた先で曲作りができます。しかしこれらの病気は、乗り越えられるものではありません。
有名になると、病気の症状が現れるため、エイミーは有名になることを嫌うのでした。
純粋に音楽と付き合うから良かった
売れない実力者はいても、売れたくない実力者はそういるものではありません。
エイミー・ワインハウスという稀代の歌声を持った歌姫は、まさに後者のような人物として映画では描かれます。
しかし、実力者の歌声に感動し、勇気づけられた人は世界中にいるのも事実です。
どうなることが正解だったのかは分かりません。
以前から薬物やアルコール依存があり、有名にならなかったとしても、それらがどこかでエイミーを襲った可能性もあります。
まるで、オズの魔法使いの『虹の彼方に』で有名なジュディ・ガーランドのような人生を歩んだエイミー・ワインハウス。