結婚にしても本当に自分が望んで手にした幸せだったかどうかは不明なままです。
寧ろ自分が心底望んだ将来ではなかったからこそ、この悪運を引き寄せてしまったのではないしょうか。
彼がもし紗枝と違った選択肢をしていたらまた違った道が出来たかも知れません。
真の父親になる物語
娘を抱えた康平というラストカットは“真の父親”になったことを意味するのではないでしょうか。
一度目の結婚では康平はまだまだ力量が足りず、自己破産した挙句幼馴染まで不幸にしました。
この時の彼はまだまだ男としても、そして夫としても半人前で子供を持てる程ではありません。
結婚したから幸せになるのではなく、幸せを追求した結果選択肢の一つに結婚があるのです。
康平は最後にそのことに気づけたからこそ立派な父親になれたのではないでしょうか。
康平と紗枝の結婚の真相
ラストカットを康平と彼の娘として見たとき、当然紗枝とは結婚したと解釈するのが自然でしょう。
しかし、映像ではラストも含めて一度たりとも二人が結婚したとは明示されていません。
果たして二人の結婚の真相はどうなのでしょうか?
2人は結婚したのか?
やはり流れから行くと康平と紗枝は結婚したというのが自然な解釈ではないでしょうか。
それはあのラストカットでもう何もかもを忘れてただ必死に抱きしめ合う姿が示しています。
また、康平だけではなく紗枝もまた結婚を望んでいたからこそ故郷へ戻ってきたのです。
彼女も彼女で意気揚々と故郷から東京、そして海外へ出たのはいいものの挫折と苦難に満ちていました。
就職も決まらず、婚約までした紗枝は北見が写真撮影中に死亡するという喪失を経験しています。
現実の苦しさを味わってきた二人だからこそお互いの存在をより愛おしく思えたのではないでしょうか。
ハナミズキの樹
二人が結婚したと解釈出来る一つの伏線がそれこそタイトルにもなっているハナミズキの樹です。
これは紗枝の亡き父が生前に遺した樹なのですが、いわゆる一つのパワースポットみたいなものでしょう。
「永続性」「私の想いを受けてください」という花言葉があるこの樹がずっと二人を見守っていたのです。
こうした自然の木に不思議な力が宿ることはままありますが、このハナミズキもそれだったのではないでしょうか。
普通だったらもう別れてもおかしくない筈の康平と紗枝がくっついたのもそれが理由でしょう。
二人の運命はもう既にこのハナミズキの樹で決められていたのかも知れません。
それが二人の「お帰り」「ただいま」に表現されているのではないでしょうか。
純粋だからこそ遠回りする
回りくどい道のりでしたが、それだけお互い自分の人生に本気だったからこそ遠回りしたのでしょう。
神様は決してその人に乗り越えられる試練しか与えないといいます。
二人に訪れた数々の苦難や挫折は例えとの結果が失敗で終わっても彼らにしか乗り越えらない試練です。