この設定は旧作でのダニエルの人種が関係しているのではないかと考えられます。
ダニエルは移民系のキャラクターですからその甥はベンタハルでなければいけなかったのでしょう。
相棒は必要だったのか
そうなるとスーパー刑事のマロの相棒は必要だったのでしょうか。
補完など必要ないほどマロは一人ですべてを解決できるはずです。
しかしそれでは『TAXI』ではなくなってしまいますしシリーズという必要すらなくなってしまいます。
『TAXI5』と銘打った以上、相棒の存在は不可欠です。
相棒とは互いに足りないものを補い合う関係といえます。
そこで『全て持っている』キャラと『何も持っていない』キャラというコンビにしたのではないでしょうか。
監督もキャストも一新した新作映画
主人公であるコンビ、マロとエディはフランク・ガスタンビドとマリク・ベンタハルが演じました。
ガスタンビトは脚本・監督も務め、この新しい『TAXi』を生み出すことになったのです。
ガスタンビドとベンタハルは『TAXiシリーズ』の大ファンで、どうしても自分たちで作りたいとベッソンに直訴しました。
二人の「新しい『TAXi』を作ることをどう思う?」という質問に「いいんじゃないか」と答えたベッソン。
一気に書き上げた脚本も気に入ってもらえ、製作開始にこぎつけたのです。
旧4作へのリスペクト
二人は元々このシリーズの大ファンでしたので、本作の随所に旧4作へのリスペクトが感じられました。
今までの名シーンが語られるところなどは、シリーズを観てきた観客にとって懐かしく感じたでしょう。
豪快なカーアクションや派手に車を壊しまくるスタントなどは見事に踏襲されていました。
『新作』であることへのこだわり
しかしながら『新作』であることへのこだわりも随所に感じさせます。
例えば元の署長・ジベールが市長として登場するなど前作から時間がたっていることを示していました。
何と署長に昇進していたアラン始めマルセイユ警察の署員たちも一新されているのです。
以前よりもさらに曲者ぞろいで一人一人にキャラクター付けがなされていて活躍の場を与えられています。
さらに、主人公コンビの立場も変わっていました。
プジョー407
前作で『406』からリニューアルした『407』のタクシーが冒頭で砂漠の街にいたことで不安を感じた観客も多かったでしょう。
この後本当に登場するのかと。
それほどこの『プジョー407』はシリーズにとって大事なのです。
『もう一人』の主役
第1作でドイツの『メルセデス』を、2作で日本の『ミツビシ』などと渡り合い凌駕してきたフランス自慢の『プジョー』。
外国の名車や高級車を国産のプジョーがやっつけるというカタルシスはフランス国民の留飲を下げました。
何と言ってもこのタクシーが無ければ『TAXIシリーズ』は成り立たないのです。
まさにこの『プジョー407』を『もう一人の主役』と擬人化しても差し支えないと思います。
『TAXI』への決別
そんな407を本作では最後にクルーザーに突っ込ませ大破させてしまいました。
これこそがリュック・ベッソンとフランク・ガスタンビドの考える『本作の立ち位置』だったと思われます。