ましてや国民全体を総動員しての戦争であればその悲惨さは具体的に知らせないといけないでしょう。
カメラマンにとって写真とは”真を写す”ものであり、スーザンは何よりも中国の真実を知らせたいのです。
だからこそ次の真実を捜す旅へと出かけたのではないでしょうか。
いつ死ぬか分からない
そして三つ目、これがミンシュアンとも共通してますが、いつ死ぬか分からないという不安と恐怖があります。
仮に戦時中に結婚したとして、どちらも形は違えど危険な戦場に晒され明日の命の保証はありません。
そんな中にあってはまともな夫婦生活を営むことが出来るわけがないでしょう。
そのことが十分過ぎるほど分かっていたからこそ、スーザンはミンシュアンの告白を受け入れられなかったのです。
愛していないからではなく愛しているからこそミンシュアンを思いやって身を引いたのでしょう。
ミンシュアンが手紙を送った理由
スーザンがあの結末を選んだのはミンシュアンが送った手紙にありました。
彼は何とスーザンに向けて「結婚して下さい」とプロポーズしたのです。
果たして何故彼はそんなことをしたのでしょうか?
ジャック・ジョンソン大佐の命令
元々はジャック・ジョンソン大佐が空き缶に貴重品を入れようという提案もとい命令からでした。
大佐は「最後に帰ってきた者が貰う」と賭けの対象にする約束をしたのです。
これは勝利を得た後の目的を作ることでそれを実現する方向へ仕向けようとしたのでしょう。
自分一人だけなら兎も角チーム全体となれば自然と士気が上がります。
だからこそミンシュアンもこの案に乗っかる形で手紙を与えたのでしょう。
亡き兄の敵討ち以外の目的を作る
ミンシュアンはスーザンと出会う前まで亡き兄の敵討ち、即ち日本軍への復讐を目的に戦っていました。
復讐鬼となった場合人を呪わば穴二つで相手を倒す代わりに自分諸共差し違えるのが相場です。
その相場を避け、戦いの動機を復讐と別に持たせることで緩和し復讐鬼にしないように見せています。
この目的設定は非常に巧妙に作られており、復讐の先へ愛を出すことで上手く死の運命から逃れました。
スーザンと同じ不安と恐怖
とはいえ、ミンシュアンも奥底ではきっとスーザンと同じ不安と恐怖を抱えていたのでしょう。
それは自分がいつ死ぬかも分からないという戦場へ向かう兵士としての不安と恐怖です。
だからこそミンシュアンと違ってプロポーズを言葉にすることで払拭しようとしました。
男性とはプレッシャーに追い込まれた時自分の成功を言葉にすることで実現へと向かいます。
いわゆる“この戦争が終わったら結婚する”のセオリーがよく使われるのもそういう理屈でしょう。