出典元:https://www.amazon.co.jp/dp/B073299ZMG/?tag=cinema-notes-22
本作は2016年公開のアメリカ映画で、監督・脚本共にマット・ロス監督の指揮の下に製作されました。
10年間森で生活した後、再び外へ出て社会と関わることになるキャッシュ一家の物語を描いています。
作品としての完成度の高さ故に評価も高い良質な映画であり、以下代表的な受賞です。
第69回カンヌ国際映画祭「ある視点」部門監督賞
2016年度富川国際ファンタスティック映画祭Save Energy, Save Earth Film Award
2017年度サテライト賞主演男優賞引用:https://ja.wikipedia.org/wiki/はじまりへの旅
本稿ではベンの教育方針をネタバレ込みでじっくり考察していきましょう。
また、子供が最終的に独り立ちしていく理由やラストの新生活の真意などにも触れていきます。
“教育”とは何か?
本作は表向き「リトル・ミス・サンシャイン」のような風変わりな一家の珍道中という設定です。
しかし物語の本質は極めて硬派に“教育”とは何か?を6人の子供達の生き様を通して描いています。
その上で大きな特徴はキャッシュ一家が現代社会の文明から隔絶した森の民族であることです。
これが後述するベンの教育方針などに繋がってくるのですが、この一家には学も体力もあります。
しかし一方で世間一般の情報を殆ど知らないため、外の世界とのギャップや教育の違いに苦しむのです。
そんな中で各自が自分の内面と向き合い、独り立ちを果たしていくまでの過程が見所になっています。
故にただのコメディ系ホームドラマではない、もっと本質的な部分に切り込んだ極めて真面目なお話です。
ベンの教育方針
本作の主人公であるキャッシュ一家を見ていくとその根幹がベンの教育方針にあると分かります。
10年もの間一家を森の中で育ててきた彼の教育方針は果たしてどのようなものだったのでしょうか?
スパルタ通り越して戦闘民族
ベンの教育方針は森の中でしぶとく強く生きることを前提としたものであり、その生活もかなり特殊です。
昼間は狩りを行ったり体のトレーニングを行ったりし、夜はベンが提示した高度な課題図書を読みます。
怪我を負ったりしても「自力で乗り越えろ」の一点張りで、もはや完全にスパルタを通り越して戦闘民族のそれでしょう。
文武両道といえば文武両道ですが、余りにも極端に偏り過ぎていてまずこの一家が普通ではないことが強調されています。
近い設定だと「星獣戦隊ギンガマン」の主人公達ですが、彼らは宇宙海賊バルバンを倒す使命を帯びた戦闘民族です。
一方キャッシュ一家には何かそのような目的意識があってのことではないので、それが余計に異質さを際立たせています。
自負心の権化
徹底した「自分の力で全てを掴め」という彼の教育方針は息子・娘共々“自負心の権化”ともいえます。
自給自足・独立独歩の精神でやって来たであろうベンは力も心も頭も磨きに磨いたのでしょう。
そのような精神を受け継いだ子供達も自立していける心身の強さが十分に備わっています。
これ程に徹底して意識も実行力も高い家族などそうそう居るものではありません。
家族ものにありがちな絆でもなければ心の闇といったコンプレックスも存在しにくいのです。
こうなるともはや家族というよりは少数精鋭のエリートが6人揃ったと見ていいでしょう。
その辺りが現代社会の文明へ出た時に大きな問題を引き起こすこととなります。
浮世離れしすぎて暴走
しかしそのような極端な教育方針故に浮世離れしすぎており外の世界での暴走は留まることを知りません。
例を挙げると、外の世界に出てコーラを毒の水だと断じたり、食料をスーパーから盗ませようとしたりします。