出典元:https://www.amazon.co.jp/dp/B078JGH6RR/?tag=cinema-notes-22
この作品は思春期の登場人物を通して、人生には無数の選択肢があり日々を大切に生きてもらいたいというメッセージを伝えています。
ですが設定の難解さから評価は著しく低い作品になってしまっています。
しかし物語の全貌を理解すると、作画の豊かな表現力と思春期の瑞々しさを感じることのできる作品であることに気づきます。
作中に登場する登場人物や「もしも玉」から、この物語の全貌を考察していきたいと思います。
「ナズナ」の花の意味を考察する
まず最初に、この作品の理解を促すために欠かせないのが「ナズナ」という植物の花言葉と名前の由来です。
ナズナは春の七草で有名ではありますが、花言葉や名前の由来をご存じの方はどれほどいらっしゃるでしょうか。
映画の中で印象的にナズナの花が揺れるシーンがあったため、気になり調べてみると映画の解釈を促すためには欠かせない要素となっていました。
ナズナの花言葉
「あなたに私のすべてを捧げます」
「あなたに私のすべてをお任せします」引用:http://hananoomoi.com/archives/2640
なずなは典道を誘い「駆け落ち」をしようとしましたが、本気で「しよう」とも「できる」とも思ってはおらず、劇中では多くの判断を典道に任せていました。
駆け落ちをしようと持ち掛けた方が消極的なのは理解に苦しむ部分。
そんななずなを理解しようとしたときに、花言葉がキャラクター設定で重要な役割を果たしていることがわかります。
ナズナの名前の由来
次にナズナの名前の由来です。
諸説あるようですが、そのうちの1つが物語の設定とリンクしていることは決して偶然ではないでしょう。
名前の由来は、夏になると枯れること、つまり夏無(なつな)から
引用:https://ja.wikipedia.org/wiki/ナズナ#名前について
これは、なずなが夏休み中に引越しをしてしまい「夏を過ぎれば、なずなに恋心を抱いている男の子たちの前からいなくなってしまう」という設定とリンクしています。
『銀河鉄道の夜』の影響を考察する
原作者の岩井俊二氏が今作を作る際に「『銀河鉄道の夜』のような物語をやりたかった」と語っていたことは、各所で語られており有名な話です。
『銀河鉄道の夜』についての記事ではないため、上澄みの設定だけを掬う形になることをご容赦願いたいのですが、今作の岩井俊二監督版では典道となずなは電車に乗ることはありませんでした。
今作で「もしも電車に乗ったら」という世界を見ることができたことと、「もしもの世界」で電車が海の上を走るシーンは『銀河鉄道の夜』の影響によるところだと解釈できます。
「もしも玉」の存在を考察する
岩井俊二監督版では存在しなかった「もしも玉」ですが、今作ではどのような存在として登場しているのか考察していきましょう。
テレビドラマシリーズの世界観を引き継ぐための装置
岩井俊二監督版はテレビドラマシリーズで放送されており、「もしも玉」はそのドラマのシナリオ制作ルールを今作に持ち込むための装置として登場させたことがうかがえます。
そのシナリオ制作ルールとは「主人公の選択によって未来がどう変化するのかを見せる」というものですが、「もしも玉」はこの設定を厳密には踏襲せず、いくつかの意味を持たせて登場させたことが劇中から読み取れます。
デザインから考える「もしも玉」の存在意義
上でも述べましたが今作で登場した「もしも玉」。その複雑なデザインには特別な意味があると考えるのが自然です。