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アメリカで4人の大学生が起こした強盗事件を映画化した「アメリカン・アニマルズ(American Animals)」。
実話を元にして作られた本作の最後に本人が登場することでも話題になりました。
特別な存在になりたいと願うエヴァン・ピーターズ演じるウォーレンとバリー・コーガン演じるスペンサーが立てたある大胆な計画。
それは大学図書館から時価1200万ドルの貴重な鳥類画集を盗むことでした。
メンバーを2名増員して臨んだ強盗劇で、彼らは果たして無事に図書館から画集を持ち出せるのでしょうか。
今回は、犯罪の動機・出所後のスペンサーが鳥の絵を描く理由・逮捕された原因を考察します。
犯罪の動機
時価1200万ドルの画集は、誰から見てもお宝です。
しかし彼らの家庭は恵まれている方であり、盗みをするほどお金に困っている様子はありませんでした。
なぜ危険を冒してまで強盗事件を起こそうと思ったのでしょうか。
大人になることへの不安
何不自由なく育った彼らには一見悩みがなさそうです。ですが実はとても将来に怯えていたように見えます。
このまま大学を卒業して社会に出た後は結婚が待っていて、子供ができてそのうち年老いて死ぬ。
一般的に幸せと呼ばれる生き方は無味乾燥していて、自分じゃなくてもいいのではないかとも思えたのではないでしょうか。
「自分はこの人生の流れに飲まれていくだけなんだろうか」。
「社会の歯車の1つとして周り続けるだけの一生を送るのだろうか」。
それは不安というよりも恐怖に近かったのだろうと思われます。
自分の存在意義を見出せないまま死ぬことになりそうで、抵抗せざるを得なかったのではないでしょうか。
現状を打ち破るには大胆なことをすべし
芸術家を目指していたスペンサーは、偉大な画家は悲劇に見舞われた経験を持つ点に注目しました。
何か大きなことを乗り越えないと、世に名前を残せないことを確信したのでしょう。
良い行いでも悪い行いでもいいから、自分の人生に劇的な変化をもたらすショックを与えたい。
死に瀕した人間の心臓に電流マッサージをするように、思いっきり負荷をかけて本当の自分を目覚めさせたいと考えていたはずです。
そして目覚めた時にはきっと新しい人生が待っているはずだと思ったのではないでしょうか。
スペンサーは「自分は死んでいる」と常々思っていたのかもしれません。
映画で強盗方法を学ぶ
図書館から画集を盗む計画を立てた際に、ウォーレンは強盗映画を観て学びました。
確かに強盗に対する知識が無い状態で実行するのは勇気がいるかもしれませんが、なぜ映画をお手本にしようと思ったのでしょうか。
犯罪はフィクション
小さな盗みならば遊び感覚でできたのでしょうが、大掛かりな強盗となると話は別です。
映画を教材に選ぶこと自体、彼らにとって現実味がないことであることを表現しているように思われます。
つまり今回の強盗は、現実とは違う世界に位置するものだと思っていたのではないでしょうか。
強盗は1つの作品
強盗は実際にやってみると多分泥臭い作業の連続であり、卑劣な行為でしょう。
しかし映画の中の犯罪は華麗でクール。憧れさえも抱かせるものだったのだと考えられます。