そして一番大事なのは母の遺体の意味で、これは彼が育ってきた家庭環境にありました。
ルーカスの母はいわゆる毒親で、神童で天才に育って欲しいからと地下室にて鎖で縛り付け勉強させたのです。
その歪みで精神に限界が来てしまい、更に自宅に帰っても結局は「人生と向き合いなさい」と言われる始末。
毒親が求めるルーカスはあくまでも自分が求める都合の良い息子であり、完全な独善なのです。
だからこそルーカスは母を殺してまでも自身の精神の平衡を保とうとしたのではないでしょうか。
皮肉にも精神面での解放は実現せず、ルーカスは結局真の意味で脱出出来ない男だったことを意味しています。
護送車のマスク男
本作で二つ目に特徴的なのがオレンジ色の囚人服を着た、警察の護送車の中に居たマスク男の存在です。
果たして彼はどんな存在で、一体物語の中で何を意味するのでしょうか?
もう一人のルーカス
正体はかなりあっさり判明し、マスク男の正体はもう一人のルーカスだったのです。
正確にはルーカスの潜在意識が囚人服を着た男として具現化した存在ではないでしょうか。
その証拠にマスク男はルーカスに向かって自分がしてきた罪を認めろと口にします。
そう、ここでルーカスという男の本性が全てマスク男を通して暴かれるのです。
自分に嘘をつき逃げ続けていたルーカスがこのマスク男の登場でツケを払うときが来ました。
精神病院患者
そしてそのマスク男を殺そうとしている最中ルーカスの中に精神病院に居た頃の日々が蘇ります。
その風景は凄まじいもので、何とパラノイアの電気椅子の部屋に看護婦が居たという奇妙な状況です。
更にその後彼女へ根拠なき罵詈雑言の数々をぶつけるなど、妄想癖と虚言癖の酷い男でした。
それまで見せてきた好青年の姿から一気に真逆の狂人へと姿を変えてしまう様は見ていて圧巻です。
将来のルーカスの姿
そんなもう一人のルーカスの象徴であるマスク男は将来のルーカスの暗示かも知れません。
上述した毒親殺しにも繋がるのですが、誰よりも脱出することを望んでいながら脱出出来ていません。
囚人とは正に囚われた人・脱出出来ない人の象徴であり、正にルーカス自身です。
他者と自分を傷つける形でしか精神を保てない脆い男、それがルーカスという男ではないでしょうか。
そんな彼の行き着く将来は間違いなくこのマスク男の如き囚人であり、まともな人生は生きられないでしょう。
クロエがゲーム参加を迫った理由
さて、物語冒頭ではクロエがゲーム”パラノイア”にルーカスの参加を迫りました。
その理由はラストから逆算的に読み解いていくと非常にスムーズです。
あらすじを整理しながら、その理由を読み解いていきましょう。
表向きの理由
表向きは冒頭で示されていたようにゲーム最終章を解ける頭脳を持ったのがルーカスだけだからでした。
最初の段階では彼は孤独でありながら同時にIQに物凄く優れた天才であることが示されています。