そして何よりも意識したのは前作の主人公エヴァンとの差別化だったのではないでしょうか。
恋人の過去を変えるためのタイムワープという点は同じで、後の部分をどう差別化を図るかで勝負しました。
共通しているのはどちらも一時的に幸せになるが結果として後から不幸が多くなるということです。
そこで本作では事故での後遺症や恋人だけではなく友人のためという理由を持ってきたのでしょう。
前作エヴァンは最初自分の為に過去を変えるつもりがどんどん後半で他者の為になっていきました。
本作のニックは丁度その真逆で最初は他者の為に動いていたのがどんどん自分の為になっていきます。
この行動原理と動機の逆転を起こし作品構造と主人公像をひっくり返したのがニックのタイムワープの真意でしょう。
能力が遺伝する理由
最終的にニックは自らが犠牲になるしかないとしてジュリーに子供を残して一人自己犠牲で覚悟を決めました。
そしてそのタイムワープは生まれてくるニックとジュリーの息子へと継承されています。
何故能力が遺伝するのでしょうか?前作でも明かされなかったこのギミックについて見ていきましょう。
一子相伝型の特殊能力
この能力が遺伝するのはこのタイムワープ自体が一子相伝の特殊能力だからではないでしょうか。
何せタイムワープと過去改編を自分の都合で行えるのですから、誰にでもというわけにはいきません。
だからこそ家系の中でも特別にその血を濃く受け継いでいる者だけに現われるのではないしょうか。
幸いだったのはこの能力を使える者が主人公とその息子以外に居なかったということです。
もし他にこの能力を持った者が居たとしたら全く違う結果になったかもしれません。
不可避の宿命
世の中にはごく僅かでありながらこの手の“不可避の宿命”を抱える人達が居ます。
それは本人の意志と無関係に起こる人知を越えた出来事を経験する運命を決められている人のことです。
本作においてはニックとその息子が正にその不可避の宿命を抱えた、ある種呪われた家系なのでしょう。
ニックの場合恐らくはその力の使い方が最後まで分からず完璧には使いこなせなかったかもしれません。
だからこそ自分が犠牲になり息子へ継承させる形でしかこの宿命を成し遂げられなかったと考えられます。
エヴァンの直系か
前作との繋がりということで見ると、ニックが実はエヴァンの直系の息子と考えられます。
母親から後半に父が自殺したことを聞かされ、また前作の設定にも少し触れられていました。
何故その設定がないのかというと今度は継承という別問題も盛り込むことになるからです。
そうなると作品として見せたいものにブレが出来てしまい、最悪破綻しかねません。
その辺りを避ける為に直接的な言及を避けたのではないでしょうか。
救った人の未来
最後は自己犠牲でその命を散らせることで何とか恋人ジュリーの命を守りました。
しかし、他の人達の未来がどうなったのかまでは触れられていません。
ここでは可能な限り救った人達の未来について考えてみましょう。
ジュリーと息子
まず何度か触れたように、ジュリーと息子は無事に生き延びて生計を立てています。