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映画『インサイド』は2016年公開のスペイン・アメリカ合同のホラー映画で、2007年の原作映画『屋敷女』のリメイク作品です。
映画『スペイン一家監禁事件』を代表作に持つミゲル・エンジェル・ビバス監督に脚本がジャウマ・バラゲロとなりました。
更に主演レイチェル・ニコルズと助演ローラ・ハリングという豪華布陣で、非常にクオリティの高い作品になっています。
あらすじは妊娠中に交通事故で夫を亡くし娘が聴覚を失ったという悲惨な経験をした主人公サラのお話です。
本稿ではそんな妊婦サラに謎の女が襲いかかってきた理由をネタバレ込みで考察していきましょう。
そして最後に女がサラを助けた理由と女が正体を明かした意味についても併せて掘り下げていきます。
原作との相違点
本作はフランス映画『屋敷女』のリメイク作ということもあり、まずはここで相違点を比較してみましょう。
基本の設定や話の流れは一緒で、妊婦サラに襲いかかってくる謎の女というホラー要素は変わりません。
その上で違いを見ると、『屋敷女』では殺しの残虐さや流れ出る血の量といったスプラッター描写に重きを置いていました。
一方本作ではそのようなスプラッター描写よりもサラと女性の人間関係や心理描写といったサスペンスに重きを置いています。
また最大の違いは結末で、『屋敷女』ではサラは助からずお腹の赤ちゃんは謎の女の手に渡ってしまうのです。
一方本作では何故かサラは助かって生き延びるのですが、果たして何故このような違いが出たのでしょうか?
後発作品だからこそ出せた解体と再構築の物語がどのようなものであったのかが本作を考察する鍵となるでしょう。
謎の女が妊婦のサラを狙った目的
本作最大の恐怖は謎の女妊婦のサラを狙った目的が終盤まで明かされないことにありました。
果たして謎の女が執拗なまでに彼女をつけ回した動機とは何だったのでしょうか?
彼女の正体などにも踏み込みながらネタバレありで考察していきます。
謎の女の正体
謎の女の正体はサラが起こした交通事故の被害者の女性だったのです。
即ち謎の女はサラに復讐を目的として近づいたことになります。
サラが居留守を使って帰そうとしたときに直ぐに嘘だと見破ったのもこれが理由でしょう。
実家の場所も警察や役所に行って聞くなどしてかなり入念に調べたものと推測されます。
そうでなければまずここまでスマートで無駄のない行動が出来るはずがありません。
真の目的
そして謎の女がサラへ復讐する真の目的はサラの赤ちゃんを我が物として奪い取ることでした。
これには謎の女が同じ妊婦で、交通事故の結果流産してしまったことが背景としてあります。
勿論サラも夫の死や娘が聴覚を失うという喪失を経験していますが、赤ん坊の喪失はまた違うのでしょう。
同じ死でもこれから生まれてくる命の死を理不尽に奪われたとなればそれは自分の命を失うより辛いことです。
そんな謎の女の情念をローラ・ハリングが極めて冷静かつスマートに演じきって見せました。
サラの暗黒面
そんな謎の女はいってみればサラの暗黒面というかもう一人のサラだったのではないでしょうか。