ずっと様々な悪魔と戦いながら生き延びたマロリーと子供達は最後に盲学校に辿り着きました。
やっとマロリー達は安堵の表情を見せるのですが、そこにはどのような意味があるのでしょうか?
闇を受け入れた場所
盲学校の特筆すべき所は闇を受け入れた施設であるということです。
そう、目が見えない子ども達が楽しそうに暮しており、そこには微塵も殺伐とした空気がありません。
世間一般から見れば盲学校とはいわゆる社会的弱者と呼ばれる障害者の集まりなのでしょう。
しかし、そのような人達はその障害を障害と思わず当たり前に生きているのです。
そのような場所に辿り着けたということに大きな意味があるのではないでしょうか。
陰極まって陰のまま
面白いのはいわゆる「陰極まって陽生ず」ではなく「陰極まって陰のまま」ということです。
本作ではマロリー達は決して自殺から解放されたわけでも、光を見られたわけでもありません。
あくまでも彼女達は陰を極めて陰のまま生き延びることとなったのです。
そう、闇を最終的に光に還元するのではなく闇のまま肯定したところに本作の魅力があるのです。
普通のSFホラー映画のセオリーに安易に乗っからない所に本作の魅力があるのではないでしょうか。
籠の中の鳥の意味
そしてこのラストで一番象徴的に描かれているのはラストの籠の中の鳥が飛び立った意味です。
このシーンはいうまでもなく、彼女達から自殺の危機が去り恐怖から解放されたことを意味します。
それはつまりやっと地獄から元の地上の世界へ戻れたということではないでしょうか。
それまで地獄に落っこちて社会的に「死んだ」状態で生きてきたマロリー達が「生きた世界」へ戻ったのです。
正にノアの方舟のようにマロリー達は数千の絶望の末に希望を手にし、この瞬間に漸く「母親」となりました。
誰も信じられない世界で
本作は見えない状態に追い込むことで見えてくる真実を探そうとしたのではないでしょうか。
マロリー達は確かに地獄に落され、数々の裏切りや失望・恐怖に襲われて生き延びました。
しかし、その中で出会ったトムやオリンピアという貴重な経験もまたあったのです。
誰も信じられない世界で誰よりも自分を信じ、仲間を信じたからこそラストで幸福を手にしました。
それでもきっと彼女達は闇を好み、闇の世界の住人として生きていくことになるでしょう。
王道よりも獣道
いかがでしたでしょうか?
本作は数あるホラー映画の中でもかなり強く裏の獣道を駆け抜けることにこだわった一作です。
普通のホラー映画が闇のままバッドエンドで終わるか、闇から切り抜けてハッピーエンドの光となります。
しかし、本作は闇を生き抜き闇の世界のままハッピーエンドを迎えるという極めて特殊な作品でした。
故にこそホラー映画の中でも特別に際立つ構造となり、獣道を駆け抜けてホラー映画の神髄を究めています。
誰しもが光を見れば死んでしまう世界で闇を肯定して生きることの大変さと尊さを教えてくれました。
そんな一作として非常に高く評価出来る名作ではないでしょうか。