しかしこれらも全ては伏線といえるべき描写ではないでしょうか。
お嬢様を自分の所有物として束縛する上月は、少々変わった性癖を持つ偏った男性として描かれていました。
また、スッキを珠子としてお嬢様に使えさせた詐欺師の藤原伯爵ですが、結局彼も手の平で走らされている駒というわけです。
ラストシーンでこれらが明るみに出た時に、女性の作戦勝ちというフラグが立ちます。
愛を貫いた女性たち
騙すふりをして逃げ切った秀子とスッキは、原作にはない結末をむかえています。
女性が苦しみから解放され、本当の「愛」と共に新たな一歩を踏み出した瞬間ではないでしょうか。
劇中の医師と看護師の正体
劇中に登場する精神病院は大きな役割を担っています。
騙された人が入る場所という認識
精神病院は本作に置いて重要な場所であり、序盤からの流れで騙された人が入る場所、と認識させられます。
おらのお嬢様が狂ってしまわれた
引用:お嬢さん/配給会社:CJエンタテインメント
服を交換した秀子が、珠子を裏切ったと思わせるセリフで完全に騙された人も多いのではないでしょうか。
劇中の精神病院は、何を叫んでも病気だからと済ませることができる環境です。
いくら真実を叫んでもまともに取り合ってはもらえないでしょう。
だからこそ、精神病院へ入れられることは邪魔者を隔離するということに繋がっているのです。
医師や看護師はスッキの仲間
劇中、秀子とスッキは互いに騙そうとしていたことを暴露していますが、その際にスッキは故郷の仲間に手紙を書いていました。
おそらくその手紙には、これまでの詐欺の計画が変更になったことを記していたのでしょう。
すなわち騙すターゲットが、秀子からハ・ジョンウ演じる藤原伯爵へと変わったと告げていたのです。
そしてこの手紙を受けた者こそ、精神病院の医師や看護婦たちではないでしょうか。
タコが意味するもの
本作において「タコ」は見逃せない存在となっています。
なぜ監督は、抽象的ともいえるタコを登場させたのでしょうか。
葛飾北斎の春画
劇中で秀子が書庫で見た絵のひとつに葛飾北斎の春画である「蛸と海女」があります。
そこには異様な快楽を与えられ、更に四肢の自由を奪われた女性が描かれているのです。
秀子はこの絵を見たことで、おそらく強烈な衝撃を受けたのではないでしょうか。
海女を自分と重ね、自らがんじがらめのタコを巻き付けてしまったのかもしれません。
当然のことながら、全ては上月の意図するものだったはずです。
葛飾北斎のタコの春画は、洗脳にも似た強い影響を秀子に与えたのでしょう。