今でいうとボイスレコーダーなどに相当しますが、こういう言質はそれだけで弱味となります。

幾分卑劣な手段ではありますが、しかし参謀本部だって決して綺麗事だけでやっているわけではありません。

ましてや国家に関わる人間程表向きクリーンに見せていても裏側にはこういう泥沼はあるものです。

そこで裏の道理に通じている結城中佐は極めて非常識ながらもスレスレで違法にならない任務を遂行しています。

通常では考えられないことを裏ルートで合理的に成し遂げることにこそ結城中佐の狙いはあったのではないでしょうか。

三好の正体

二つ目に結城中佐の側近の一人でもあった三好ですが、出番は少ないものの彼もまた曲者です。

死んだと見せかけて飄々と生き延びるなどどこかつかみ所が無く本質が分かりにくい彼は何者でしょうか?

二重スパイ

二重スパイ コード・ネーム「ガルボ」: 史上最も偉大なダブル・エージェントがノルマンディ上陸作戦を成功に導くまで

彼の正体は何と二重スパイで、いってみれば一番フットワークの軽い自由闊達な人でした。

いわゆる組織の中でもフリーランスで動ける実力と判断力を持ったエースだと判明します。

彼は前半で嘉藤との諍いでD機関を追放されますが、これ自体がそもそも目眩ましだったのです。

表の任務を遂行するのが嘉藤達だとすれば、三好は正に嘉藤の「影」といえるでしょう。

ある意味本作一番の真打ちですが、真打ちはこのように決して表舞台には立ちません。

裏でひっそりと着実に、そして確実にチャンスを窺って仕掛けを行うのです。

実は金持ちの御曹司

改訂版 金持ち父さん 貧乏父さん:アメリカの金持ちが教えてくれるお金の哲学

そういうことなので前半で嘉藤と演じた母親と懐中時計のくだりは全部嘘だったのです。

実家は金持ちであり、スパイ活動もあくまで金持ちの道楽感覚でした。

結城中佐はそれを全て承知の上で彼を裏の切り札に据えていたのでしょう。

なので嘉藤らのみならず小田切と実井までをもしっかりと生かしていたのです。

このことから彼は勝利の帝王学をしっかり叩き込まれ自身の身の振り方も弁えていると推測されます。

それ位物凄く達観した物事の見据え方が出来る人だったのではないでしょうか。

情に流されない

書道色紙/夏目漱石の名言『智に働けば角がたつ、情に棹させば流され~』/薄茶額付/受注後直筆(千言堂)

そして何より三好の最大の特徴が嘉藤にもいっていた「情に流されない」という所です。

これはスパイになる人間が一番持ち合わせていないといけない部分で、彼は情で動きません。

全てしっかり利害と全体を俯瞰した状況から猛禽類の目を内側に秘めて動きます。

そしてそれこそが実はこれから述べることになる二重スパイのヒントにもなるのです。

二重スパイになることを提案した理由

KGBの男-冷戦史上最大の二重スパイ (単行本)

物語中盤、イギリス軍に捕らえられた嘉藤は二重スパイになることを提案します。

リンのハニートラップに騙されるわ軍に捕まるわと余りにも良いとこなしな嘉藤。

ここで彼はスパイとして覚醒するのですが、一体何の理由があってのことなのでしょうか?

二重の目論見

目論見(Toxic VS Telephone Ver.)

二重スパイとは正確にはその裏に仕掛けられた二重の目論見のことを指しています。

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