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映画『108時間』は2018年公開のアルゼンチン・スペイン・ウルグアイ合作のスリラー映画です。
日本では「未体験ゾーンの映画たち2019」での公開となり、断眠をテーマとして描かれています。
主演にはベレン・ルエダを据えてグスタボ・エルナンデス監督の下で制作されました。
物語は廃墟の精神病院でビアンカが舞台の役作りの為にアルマから108時間の断眠を強要されたことが始まりです。
そこで起こる様々な恐怖はもはや演技を超えて真に迫るリアルなものとして新感覚の体験となりました。
今回は108時間の間寝てはいけない理由をネタバレ込みで考察していきましょう。
また、ビアンカ達が108時間眠らないことで本番に起こったことやその先にある恐怖も読み解いていきます。
役と素の境界線
本作が挑んだ最大の特徴にしてテーマは“役と素の境界線”ではないでしょうか。
役作りには大きく二種類、「自己投影型(役を自分に引き寄せる)」と「憑依型(自分を消して役に染める)」があります。
例えば有名人ではよく木村拓哉などは「何を演じても木村拓哉」といわれますが、それは彼の役作りが前者だからです。
一方岡田准一のように主演から脇役までカメレオンの如くこなせる人もいますが、そういう人は後者に相当します。
ここで誤解してはいけないのはどちらが良いか悪いかではなく、単なる個性の違いでしかないということです。
その中で本作は108時間寝ないことで役に近づけるのですから、後者の憑依型をテーマとしているのでしょう。
その過程でどんどん役と素の区別がつかなくなる状態が何を引き起こすのか?を考察していきます。
108時間の間寝てはいけない理由
本作は徹頭徹尾アルマがビアンカ達に108時間の断眠を強要しました。
上記したようにそれは役作りの為なのですが、断眠によって何を彼女は果たさせようとしたのでしょうか?
あらすじを振り返りながら考察していきましょう。
覚醒
一番の狙いはビアンカ達に断眠させることで彼女達の隠れた潜在意識を「覚醒」させることにありました。
しかもただの無謀な実験ではなく、かつて同じことを「断眠」という舞台でやって成功させているのです。
食事制限などはしていませんから、ビアンカ達にとっても有意義なものだと思えたのではないでしょうか。
顕在意識での役作りは表面でしかないので、もっと深い部分での役作りには潜在意識に迫る必要があります。
そういったことからアルマはビアンカ達に108時間の断眠を強要したのです。
ゾーンに入る
この「覚醒」とは巷でいうところの「ゾーンに入る」という表現に置き換えられ、漫画などでは見かけます。
「テニスの王子様」の無我の境地や「黒子のバスケ」のゾーンなどが該当するでしょう。
現実のアスリートでも極限状態までプレイしていく内に全てがスローに感じられる瞬間があるといいます。
これをアルマは108時間眠らないことで意図的に入り込ませようとしたのではないでしょうか。
とはいえ、ゾーンとは本来意図したものではなく自然発生で起こるのが一番望ましいものです。