出典元:https://www.amazon.co.jp/dp/B07ZQ261TN/?tag=cinema-notes-22
映画『37セカンズ』(37 Seconds)は2020年2月公開の日米合作映画で、HIKARI監督に佳山明主演で制作されました。
更に脇には神野三鈴、渡辺真起子、大東駿介という名のある実力派俳優・女優で固められています。
ある障害を抱えるゴーストライター・貴田ユマが過干渉な母親からの自立を目指して奮闘する物語です。
非常にクオリティが高く第69回ベルリン国際映画祭パノラマ部門にて以下を受賞しています。
第69回ベルリン国際映画祭パノラマ部門
観客賞
国際アートシアター連盟賞引用:https://ja.wikipedia.org/wiki/37_Seconds
本稿ではユマが独り立ちを望む理由をネタバレ込みで考察していきましょう。
また「37秒」が意味するものやユマの出生が伏せられていた理由についても読み解いていきます。
障害者が向き合う”自分”とは何か?
本作は主人公のユマが障害者であることから始まりますが、物語の本質はあくまで“自分”とは何か?です。
ここが本作を単なるお涙頂戴の感動ポルノにしていない素晴らしい所ではないでしょうか。
障害者という設定がなくても十二分に設定考証などが細かく練られているので通用します。
しかし、そこに障害者という設定を加えることで物語をよりリアリティのあるものにしているのです。
つまり障害者が先にあるのではなく、「自分らしさ」の追求の上に障害者が後追いする形となっています。
そうした細かい仕掛けが物語の歯車と噛み合うことで生まれるものをこれから考察していきましょう。
ユマが独り立ちを望む理由
ユマは自身の体のことも含めて様々な”障害”に苦しみ独り立ちを目指して奮闘します。
後半では遂に母から逃げる為に家出して行方すら眩ませてしまうのです。
彼女がそこまでする程追い詰められていた理由を考えていきましょう。
アヤカの引き立て役でしかない
まず一つ目が人気漫画家にしてYouTuberとして華々しく活躍しているアヤカの引き立て役でしかないからです。
アヤカは彼女の親友という設定ですが、実態は単なる商売道具として都合良くユマを利用しているに過ぎません。
しかも藤本編集長にアダルト漫画路線で行こうとしても男性経験がないからと突き返されてしまいます。
このようにどこまで素晴らしい才能があろうと障害者いうだけで日陰の人生を余儀なくされるのです。
その人生を小さい頃から強制されたとあっては独り立ちを望むことも無理はないでしょう。
毒親の過干渉
二つ目が毒親ともいえる母・恭子の過干渉によって精神的に潰されかけていたからです。
ファッションもまともに出来ず、交友関係にまで口を挟んでくる独裁政権の象徴でありましょう。
更に後半では独り立ちしようというユマの変化すら認められずユマを縛り付けていくのです。
勿論子供への愛情や思いやりからでしょうが、彼女の場合はそれが行き過ぎて洗脳ですらあります。
そうした子離れ出来ていない毒親という家庭事情の問題から逃れるには環境を変えるしかありません。
舞と俊哉との出会い
そして何より決定打となったのが舞と俊哉との出会いです。
彼女自身は健常者ですが、障害者への理解もきちんとあり気さくな姉御肌でユマの理想の女性像でしょう。