しかし、そんな関係でもちっともいやらしさや胸糞悪さがないのは二人とも裏表がないからでしょう。
ストレートに本音をぶつけ合う分喧嘩もしますが、嘘をついて騙したり貶めたりはしません。
だから非常に後腐れのない根っこのサッパリしたフラットな友達関係ではないでしょうか。
不器用な漫才トリオ
総じてこの三人はお姫様を争い合うライバルというより不器用な漫才トリオではないでしょうか。
凄く格好いいイケメンと美女が演じているのに如何にも少女漫画らしい優雅さやロマンチックさとは無縁です。
それどころか泰陽に至っては星を口説いていることを全校生徒の前で公言してしまいます。
それを見て星が狼狽し後ろから深月が冷静に突っ込みを入れたりと恋愛というより漫才でしょう。
少なくとも咲が絡んでない三人の関係性は最後まで下らないながらもほのぼのとした健全な関係です。
三角関係を扱いながらも最後まで安心して見ていられるのはこうした関係性にあります。
星が本当に好きなのはどっち?
とはいえ、当然ながら星は最後に泰陽と深月のどちらかを選ばないといけません。
一見星が好きになりそうなのは深月ですが、恋愛は最後まで万事塞翁が馬です。
果たして星がどちらを選んだのかをその理由と共に掘り下げていきましょう。
泰陽
星が選んだのは深月ではなく泰陽の方ですが、いわゆるときめく感じではありません。
ラストシーンの告白にしたって「ダサいし長い」とバッサリ切っています。
でも泰陽を選んだ理由はやはり最後まで気にかけてくれるからではないでしょうか。
咲が来たことで一時は迷いが生じながらも自分の本心と向き合った結果です。
だから友達のようなサラッとした関係でありながらもお互いを気にかけ思いやっています。
ではなぜ最初好きになった深月とは恋仲にならなかったのでしょうか?
無自覚に傷つける深月
深月という初恋が居ながらなぜ星が振ったのかというと深月が無自覚に傷つけたからでしょう。
彼は最初深月からの告白を聞いて「そういうのは好きじゃない」とバッサリ切っています。
深月が最初好きになったのは星の「名前」であって星自身ではありません。
更に彼はあることがきっかけで幼なじみの泰陽に全てを譲る二番手人生を是としてきました。
つまりスタートラインの時点で深月は最初から泰陽と同じ土俵で戦うつもりなどありません。
しかしそうなるともう一つ気にかかるのがラストの水泳勝負です。
泰陽を鼓舞するため
ではラストで深月が泰陽に水泳勝負を持ちかけた意図は何だったのでしょうか?
結論からいえば、あれは恐らく落ち込んだ泰陽に自信を取り戻させる為の荒療治です。
その証拠に深月は泰陽にこんな忠告をしています。
星が本気でお前を振ったと思っているのか?お前が咲に優しくしているのは同情だろう。
引用:4月の君、スピカ。/配給会社:イオンエンターテイメント
この後水泳勝負を持ちかけますが、本当に星を口説きたいならこんな忠告はしなくて良いはずです。
そう、深月は自分が振られると承知の上で敢えて泰陽の憎まれ役と引き立て役を買って出たのでしょう。
好きな気持ちはあったかもしれませんが、それも含めて泰陽を立てることを選んだと思われます。
咲の関わり方
本作の三角関係にはもう一人咲という女の子が泰陽と星の間に絡んできます。
彼女は果たしてどのような形でこの三人の関係性に影響を及ぼすのでしょうか?