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映画『BECK』は2010年公開のハロルド作石の原作漫画を実写化した作品です。
監督はテレビシリーズの『金田一少年の事件簿』『TRICK』などで有名な堤幸彦が演出を手がけています。
キャストも主演の水嶋ヒロを中心に佐藤健・桐谷健太・忽那汐里といった人気絶頂期の若手俳優達です。
物語はある日の帰り道平凡な高校生活を送っていたコユキと天才ギタリストの竜介との出会いから始まります。
いじめられっ子だった彼が音楽を通して変わっていき、バンドを組んで成長していく姿が見所です。
本稿ではコユキがリュウスケの何に魅了されたのかを徹底的に掘り下げていきましょう。
また「BECK」の名前の由来やコユキの才能などについても読み解いていきます。
平凡以外を認めない日本
本作は音楽の才能を中心に「平凡と非凡」「常識と非常識」といったテーマを描き出しています。
数ある音楽漫画の中でも傑作とされる理由はコユキの隠れた非凡な才能を引き出し伸ばしたことでした。
ということは本作の問題は「平凡」以外を認めない日本の教育や社会にあります。
「個性を尊重」「人それぞれ」と強調しつつ実態は「組織の歯車になれない人は爪弾き」なのです。
もし人と違った才能を持った者が居たら常識から外れているという理由で社会不適合者扱いを受けます。
日本では平均でこなせるジェネラリストは居ても突出した個性を持つスペシャリストは中々居ません。
実は非常に鋭い日本教育・社会の問題点に焦点を当てつつ埋もれた才能を光らせようとしたのが本作です。
この視点を前提として起きながら本作を考察していきましょう。
コユキはリュウスケの何に魅了されたのか?
コユキが変わり始めたきっかけはニューヨーク帰り天才ギタリストのリュウスケ(以後竜介)との出会いでした。
彼と関わっていく中でコユキはどんどん音楽の才能を引き出して伸ばして生き生きと輝き始めます。
そんなコユキは一体竜介の何に魅了されて音楽を始めたのでしょうか?
才能とセンス
まず第一印象でコユキが魅了されたのは竜介の持つ天性の才能とセンスです。
バイリンガルとして語学も堪能でギターの腕前も超一流、見た目も洗練された格好良さを備えています。
それまで平凡な高校生活を送ってきたコユキにとって正に「憧れ」の象徴ではないでしょうか。
温厚で等身大なのんびり屋という正反対のコユキと対極に位置するカリスマというかスターです。
まずコユキが竜介と関わった時に感じたのはその全身から漂う非凡な才能でしょう。
音楽の才能を見出してくれた
二つ目にコユキの中にあった非凡な音楽の才能を見抜きバンドのメンバーへ引き抜いたことでしょう。
それまでのコユキは取り柄のない平凡な子として周囲から否定され続けてきたいじめられっ子でした。
そんなコユキを決して見下すこともいじめることもせず純粋に音楽の才能という個性で認めたのです。
少なくとも竜介が現われるまでコユキの可能性を見出し伸ばそうとした人は居ませんでした。
その最初の入り口を作って音楽の世界への可能性という扉を開くきっかけを作ってくれた恩人なのです。
もし竜介に音楽の才能を見出されなかったらずっと平凡なまま埋もれた生活を送っていたでしょう。
竜介の妹
三つ目にあったのが後に想いを寄せていくことになる竜介の妹・真帆ではないでしょうか。
彼女もまた竜介と同じでコユキを平凡な子ではなく非凡な才能を持った子として見てくれました。