そして何よりこのマジックミラーが象徴するのはトラヴィスとジェーンが鏡写しの関係にあることです。
そのことを分かりやすく示しているのがジェーンの顔の中にトラヴィスがくっきり映るシーンでしょう。
見方次第ではホラーかギャグなのですが、これはまだお互いの中に「愛」が残ってることを意味します。
4年の離れた歳月があっても尚トラヴィスもジェーンもお互いを思い愛していることは変わらないのです。
つまりこのシーンで改めてトラヴィスとジェーンは相手の心の中に自分の居場所を見出したのでしょう。
しかし、だからといって昔のようにまた3人一緒というわけにもいかないのが辛い所です。
鏡がなければ彼らの関係性は成立しないのですから。
のぞき部屋がある理由
マジックミラーで会話するトラヴィスとジェーンですが、そもそもなぜのぞき部屋があるのでしょうか?
お客様からは見えても相手には見えない仕様も含めて、その理由を明らかにしてみましょう。
アンダーグラウンドなお店
まず1つ目は少し上でも触れましたが、ジェーンが働いている場所がアンダーグラウンドなお店だからです。
トラヴィスが再会した息子のハンターをここに連れてこなかったのもそれが理由でしょう。
日本にもこの種のお店はありますが、そういう場所でしかジェーンは働けない世知辛さを示しています。
だからジェーンはトラヴィスにもハンターにもウォルトにも職場を知らせずに働いていました。
そういう場所だと知られたら幻滅、最悪の場合親子の縁が切れることも考えられるからです。
アメリカは基本性関係に厳しい
やや突っ込んだ理由を話しますと、アメリカはそもそもそういった性関係のお店に厳しいのです。
そのかわり男女が気兼ねすることなく関係を持とうと思えば持てる国でもあります。
自分の体を安売りして働くことは本来好ましいものではなくのぞき部屋が限度でしょう。
本編ではトラヴィスとの電話しかありませんでしたが、普段のジェーンはお客様に体を見せている筈です。
だからこそ大人の汚れや悲しみを知ってるトラヴィスしか入らなかったと思われます。
夫婦ではなくお客様とホステス
1番の理由はこの2人があくまでも「夫婦」ではなく「お客様とホステス」と強調するためでしょう。
本当に夫婦として会いたいのであれば、何ものぞき部屋ではなく直接仕事場の外で会っても良いはずです。
つまりもう2人は愛し合っていたとしても実質家族ではない赤の他人の関係になったことを意味します。
そのことを示すようにその後ホテルでジェーンとハンターの再会でもトラヴィスは居合わせません。
トラヴィスなりの愛の形とは離れていながらも遠くで見守ることだという証左ではないでしょうか。
パリとテキサスを繋ぐもの
そしてもう1つ、サブタイトルにある「パリ」と「テキサス」です。
パリとはフランスの花の都ではなくテキサス州の荒涼とした大地のパリスを指します。
ではそのパリとテキサスをつなぐものは一体何なのかを見ていきましょう。