確かに根岸自身の力ではあるのですが、これはあくまでDMCであるからこそ。決してポップス根岸に対するものではありません。
しかし、根岸はそれを盛大に勘違いし、ポップス根岸でもいけるという自信に変えたのです。
今こそ届けたい。僕の大好きな音楽を
引用:デトロイト・メタル・シティ/配給会社:東宝
これはジャックからギターを譲り受けた直後のセリフ。ジャックはメタルなクラウザーに対して、ギターを譲ります。
それを勘違いして、変な自信にしていることがこの整理負から分かるはずです。
世界崩壊のステージに向かうのは周りのおかげ
そもそも、相川の後をつけて入った遊園地で、DMCを続ける限り望んだ人生を送れないと悲嘆に暮れていました。
それがなぜ、世界崩壊のステージというジャックとの対決に舞い戻るのでしょうか。
ファンの後押し
根岸がDMCひいてはクラウザーを辞めようとしたのは、このバンドとしてやっていても自分の望みが叶わないと思ったからです。
しかし、今のやり方でも「夢を与える」という望みをかなえられていることを、ファンに教えてもらいます。
夢をもらっている
引用:デトロイト・メタル・シティ/配給会社:東宝
実家に届いたファンからの手紙に、このようなものがありました。
他にもたくさん、クラウザーだからこそ勇気づけられたというファンもいます。
つまり、根岸は今の路線でも夢を与えられていることを自覚できたのです。ポップスにこだわった結果、それが見えていませんでした。
ファンの手紙が、根岸が現在の路線でも十分夢を与えていることに気付かせてくれたおかげで、クラウザーとしてコンサートに向かうのです。
サポートメンバーの後押し
夢を与えているのは、ファンだけではありません。バンドメンバーや社長も根岸に夢を与えられていました。
DMCは俺たちの夢。そして社長の、ファンみんなの夢なんだ。
引用:デトロイト・メタル・シティ/配給会社:東宝
これはギターの和田ことジャギからの手紙の一文。この一文に、これまで根岸が夢を与えてきた人たちが記されています。
望んだ路線ではないかもしれませんが、実は自分が一番やりたかったことはやれていることに気付いた根岸。
クラウザーのメイクをして、世界崩壊のステージに向かうのにあと一押しです。
お母さんの励まし
映画の中で、根岸崇一を最大限理解しており、最大限応援する存在が母親です。
母親の励ましが、根岸に必要な最後のひと押しを押すのでした。
「クラちゃん」
根岸が母親と、散歩して神社に行くシーン。そこで母親はクラウザーを否定する根岸に対して、こう言います。
クラちゃんは、歌で夢を与えてるんよ
引用:デトロイト・メタル・シティ/配給会社:東宝
根岸が否定しているクラウザーを、母親はすべて丸く受け止めてくれていました。
この言葉には、クラウザーが根岸本人であることに母親が気付いていたことも関係しているでしょう。
最大の理解者である母親が、クラウザーを認めていることに根岸は驚きます。さらにはそんなクラウザーがすごいとまで言いました。
母親の狙いすましたかのような言葉は、根岸のクラウザーやDMCに対する考え方を変えるのでした。
母親の言葉を胸に刻んで
ファン、サポートメンバー、そして母親に背中を押してもらった根岸。クラウザーとして、DMCとして、夢を与えられるのです。
僕が音楽から夢を与えられたように、僕が今誰かに夢を与えることができる。僕にしか、僕にしか見せられない夢がある
引用:デトロイト・メタル・シティ/配給会社:東宝
走りながら会場へ向かう根岸は、頭の中でこうつぶやいていました。
この時の「僕にしか見せられない」は、おそらくクラウザーやDMCのことを言っています。
こうして、世界崩壊のステージへ自信を持って向かうことができたのでした。
でも結局やらかす根岸
そうして自信を持った根岸は、ジャックとの対決で勝ちました。このまま流れ良く終わらないのが『デトロイト・メタル・シティ』。
先述したように盛大な勘違いによって、根岸はポップスを歌うし、クラウザー化したまま相川に嫌われることをしてしまいます。
だからこそ『デトロイト・メタル・シティ』なのです。