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映画『新宿スワン』は和久井健の原作漫画を2015年に実写化・公開した作品です。
テレビシリーズも展開され、更に2017年には本作の続編も出るなど多岐にわたって展開されています。
監督は鬼才・園子温にキャストも綾野剛と山田孝之など非常に充実したメンバーで作られました。
原作者が元スカウトマンという経緯から作られた本作は新宿歌舞伎町を舞台に物語が展開されます。
真虎に救われる形で水商売のスカウトとして働くことになった主人公の白鳥龍彦。
本稿ではそんな龍彦がスカウトを続ける理由をネタバレ込みでじっくり掘り下げていきます。
またアゲハが逮捕を選んだ理由や喧嘩の末に秀吉を逃した龍彦の想いも紐解いていきましょう。
日本社会の闇
本作は社会の裏側に蔓延る闇と戦うピカレスクヒーローのドラマですが、根っこは非常に重いものです。
風俗やキャバクラで働く社会的弱者の女性・借金地獄・自殺・麻薬・詐欺スカウト等々様々な闇があります。
日本が自殺大国と呼ばれる所以は集団主義の歪みとして生まれる社会的少数派の黙殺から来ると本作は訴えているのです。
そんな世界の中で理不尽な現実を経験しながらもスカウトマンとしての矜持をもってビッグに成り上がります。
龍彦を通して描かれる裏社会のリアルに迫った本作はそうした膿を出し切ってくれる作品ではないでしょうか。
龍彦がスカウトを続ける理由
新宿歌舞伎町でスカウトマンとして成り上がる龍彦は様々な現実を経験します。
それは決して良いことばかりではなく、寧ろ辛いことや失敗の連続でした。
そんな龍彦がそれでもスカウトを続けていく理由を考察していきましょう。
弱きを助け強きを挫く
龍彦のそもそもの行動理念にあったのは「弱きを助け強きを挫く」というポリシーでした。
それが形として出たのが序盤の風俗嬢との出会いで女性をカモにして騙すような金儲けへの疑問でした。
ここで彼はスカウトした女性達を幸せにすると強く宣言し、ハーレムという巨悪へ挑む覚悟を固めます。
正に古式ゆかしい巨大な悪へ挑むピカレスクヒーロー誕生の瞬間として劇的に描かれていました。
この序盤のシーンでまずスカウトマンとしてのプロ意識が荒削りながら作られ彼の根幹となります。
この最初の一歩が強くあるからこそ、彼は何があってもスカウトマンを辞めないのです。
真虎への恩義
二つ目にあるのが何もなかった龍彦を救ってくれた真虎という生涯最高の恩師の存在です。
本作ではまだ全貌を露わにしていませんが、少なくとも火の玉みたいな龍彦を導いてくれたのは彼でしょう。
人を見抜く技を教えたり、秀吉を逃した際に生じた出来事にも大人の視点からしっかり忠告をしてくれます。
非常に冷静沈着な判断や視点で導いてくれる彼の存在がなければ真虎は上手く行かなかったはずです。
導いてくれる師匠の存在があってこそ、真虎はハーレムの巨悪を打ち砕く方向へと行けました。
今後どんなに活躍して名を成していっても真虎は龍彦にとって一生頭が上がらない大恩人ではないでしょうか。
栄子の自殺とアゲハとの再会
三つ目に龍彦は女性関連で二度大きな喪失があったことも影響しています。
一つがリストカットの挙句に自殺した栄子、そしてもう一つが逮捕を選んだアゲハでした。