出典元:https://www.amazon.co.jp/dp/B07NDMRK3P/?tag=cinema-notes-22

映画『食べる女』は筒井ともみの短編小説を元にして「食べる」と「セックス」をテーマにした作品です。

原作者自らが脚本を担当し、監督は『金八先生』『ビューティフルラライフ』で有名な生野慈朗が抜擢されています。

キャストも主演の小泉今日子を中心に鈴木京香・沢尻エリカ・前田敦子と幅広い年齢層を誇る大物達です。

更にユースケ・サンタマリアやシャーロット・ケイト・フォックスと脇の俳優・女優達と至れり尽くせりの豪華さ。

主人公・トン子を中心に8人の女たちの人生を赤裸々に描いた本作は地味ながらとても骨太な物語ではないでしょうか。

今回はモチの家に女性が集まる理由をネタバレ込みで考察していきましょう。

またツヤコがミドリにワインを勧めた理由や元夫を驚かせたマチルダの変化も併せて読み解きます。

根源的な食と性

人間の3大欲求の1つ 食事について

本作で一番の驚きは「セックス=性」という言葉が「食」と同等に当たり前の単語として扱われていることです。

しかし、性欲は食欲・睡眠欲と並ぶ人間の三大欲求の一つであり、いつの時代もなくなることはありません。

本作は表面上古き良き日本の食卓をビジュアルとして用いながら中身は今でも通じる普遍性があります。

男性との恋愛や性で傷つきながらも料理によって自分の人生を見直す生き様は時代や国関係なく大事です。

ごく当たり前ながらその当たり前さ故に軽視されがちな食と性の問題をソフトタッチに描き出しています。

そうした味わい深さの奥に隠されているメッセージは何かをじっくり見ていきましょう。

モチの家に女性が集まる理由

食べる女―決定版―(新潮文庫)

本作の物語全体を大きく支えていた屋台骨は主人公トン子が経営しているモチの家でした。

彼女は迷える女性達に手料理を振る舞っていますが、最後には女性達が一つの疑似家族をなしているようです。

モチの家が女性達の求心力になっている理由を見ていきましょう。

異性関係に問題がある女性達

自分のこと異性のこと (岩波ジュニア新書)

大前提としてはモチの家に集まる女性達がほぼ異性関係に問題がある女性達であるということです。

例えば多実子は不倫専門で並の男性では物足りず、恋愛に臆病な圭子もタナベと上手く行きません。

アメリカからやって来たマチに至っては料理下手が原因で離婚を突きつけられているのです。

そんな彼女達は正に「迷える女たち」であり、問題がない女性達はモチの家には集まりません。

いってみれば社会的弱者という立場に追いやられがちな女性達の逃げ場なのです。

食を通じて自立を目指す

医療の限界: 自立への道 健康食

二つ目に、モチの家に集まった女性達は食を通じて自立を目指し男性に負けない存在に成長しています。

後述するマチルダやツヤコがその典型で、ツヤコに至っては最後に夫のトキヲを損切りしました。

そう、迷える女たちはモチの家で男に縋って生きる必要が実はないことを思い知るのです。

そして食の有難味を知り食を通じて自立を果たしアイデンティティを再生させています。

単なる憩いの場ではなく、自立へ向けての修行の場という厳しさもまた人気の秘訣でしょう。

トン子の自活力

13歳からの自活術 一生ついてまわる家事のキホンが身につく本 (大和出版)

そして何よりもモチの家最大の魅力は餅月敦子ことトン子の自活力にあるのではないでしょうか。

雑文家として活動しながら同時に料理も出来るという独立独歩を見事に実現した女性です。

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